体系現代会計学第8巻会計と会計学の歴史

  • 電子版あり

千葉 準一 責任編集
中野 常男 責任編集

定価(紙 版):5,500円(税込)
価格(電子版):5,500円(税込)

発行日:2012/04/10
A5判 / 506頁
ISBN:978-4-502-44990-1

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【bookend版は、特に断り書きのない限り、固定レイアウト型です。】本書を読むためには、専用の電子書籍リーダー「bookend」アプリを入手する必要があります。下記サイトよりご利用の環境に合わせて各OS 対応のbookend をダウンロードしてください。
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本の紹介
会計史は、会計という人間の営む行為の意義を時間軸に沿って再確認するものであり、過去を再解釈することで、現在と未来の問題を考察するための視点をも提供する。

目次

序章 「会計」の起源とわが国における会計史研究の展開と課題
第1節 「会計」の起源と会計史研究の嚆矢
第2節 わが国における会計史研究の萌芽
第3節 わが国における会計史研究の展開
第4節 わが国における会計史研究の特徴と課題

第Ⅰ部 近代会計前史

第1章 複式簿記の生成・発展と「パチョーリ簿記論」への展開
第1節 複式簿記の生成
第2節 ベネデット・コトルリの「簿記論」
第3節 パチョーリ簿記論
第4節 イタリアおよびドイツにおける「パチョーリ簿記論」の伝播

第2章 複式簿記の伝播と近代化―オランダ、イギリスを中心に
第1節 16世紀における複式簿記の進化―期間損益計算の成立
第2節 16・17世紀イギリス簿記書にみる複式簿記の進化のプロセス
第3節 18世紀イギリスにおける複式簿記の展開
第4節 18世紀イギリス簿記書における時価評価の登場
第5節 産業革命期以降の会計への進化(1)―貸借対照表の誕生
第6節 産業革命期以降の会計への進化(2)―資金計算書の誕生

第3章 株式会社の誕生と株式会社会計の起源―オランダ東インド会社とイギリス東インド会社を中心にした初期の株式会社の会計実務
第1節 オランダの興隆とオランダ東インド会社の成立
第2節 オランダ東インド会社の組織と会計
第3節 イギリスの興隆とイギリス東インド会社の成立
第4節 株式会社としてのイギリス東インド会社と会計
第5節 英蘭の東インド会社会計の展望と課題

第Ⅱ部 近代会計の黎明

第4章 株式会社会計における財務報告の源流
第1節 会計史における運河・鉄道会社の意義
第2節 18世紀イギリス運河会社の財務構造
第3節 運河会計と財務報告
第4節 19世紀イギリス鉄道会社の財務構造
第5節 1840年代のイギリス鉄道会社の財務報告を巡る法的環境
第6節 イギリス鉄道会計における発生主義会計の先駆
第7節 1840年代イギリス鉄道における発生主義会計
第8節 1840年代イギリス鉄道会社における財務報告

第5章 会社法制の萌芽と株式会社会計―ドイツの会社定款と株式会社会計実務
第1節 19世紀ドイツの会社会計研究の手がかりと全体的特徴
第2節 初期の株式会社会計―商事慣習法としての資本利息と配当
第3節 1843年プロイセン株式会社法までの株式会社会計
第4節 1843年プロイセン株式会社法から1856年プロイセン株式規則までの株式会社会計
第5節 1856年プロイセン株式規則から1861年普通ドイツ商法典までの株式会社会計
第6節 1861年普通ドイツ商法典成立後の株式会社会計
第7節 1870年株式法改正法による準則主義採用後の株式会社会計
第8節 1884年株式法改正法の株式会社会計―貨幣資本利益計算の成立

第6章 株式会社と会計専門職業の形成―イギリスの近代株式会社制度と会計専門職業人の台頭
第1節 ソシアル・クロージャ(social closure)
第2節 近代株式会社制度の成立過程
第3節 イングランド=ウェールズ勅許会計士協会(ICAEW)
第4節 ロンドン会計士協会(IAL)
第5節 破産法の改正
第6節 ウィニーの評議会に対する挑戦
第7節 勅許状の取得
第8節 クィルターの辞任とウィニーのリーダーシップ

第7章 近代会計理論の生成―19世紀英米会計文献に見る資本主理論生成過程の点描
第1節 リトルトンと19世紀会計史研究
第2節 複式簿記の生成と資本主概念
第3節 イギリスにおける資本主理論の登場
第4節 アメリカへの資本主理論の移植と展開
第5節 資本主理論:「簿記」の理論から「会計」の理論へ
第6節 20世紀:新たな会計理論の出現

第Ⅲ部 近代会計の展開

第8章 ビッグ・ビジネスの台頭と大規模株式会社の会計―アメリカの企業合同運動期の会計事情を中心に
第1節 現代アメリカの出発点における会計
第2節 ビッグ・ビジネスの誕生
第3節 インターフェイスとしての会計と会計規制
第4節 会計実務―ビッグ・ビジネスと無形資産会計
第5節 会計プロフェッションの誕生
第6節 会計教育と会計理論
第7節 結びに

第9章 会計原則の制定と取得原価主義会計の確立―アメリカにおける会計原則制定運動と取得原価主義会計の確立過程を中心に
第1節 アメリカ会計原則と原価・時価概念
第2節 1930年以前の会計理論・実務の特徴―資本と利益について
第3節 アメリカ会計原則制定の歴史的変遷
第4節 取得原価主義会計の確立
第5節 1950年代までの会計原則と取得原価概念の歴史的展開

第10章 意思決定有用性アプローチの確立と概念フレームワークの形成―アメリカにおける会計規制の観点から
第1節 会計原則制定運動の動向
第2節 会計原則審議会の設立とその後の展開
第3節 財務会計基準審議会の設立と概念フレームワークの制定
第4節 FASB概念フレームワークの展開と変容
第5節 FASB概念フレームワークをめぐる展望

第Ⅳ部 日本における会計の発展

第11章 三菱簿記法制定以前の三菱の会計―三菱・日本郵船の会計発展の源流
第1節 問題の所在
第2節 三菱・日本郵船経営・会計史の概要
第3節 三菱・郵船の会計の特徴
第4節 1874年以前の会計帳簿
第5節 簿記法制定以前の会計との関連と明治初期の会計実務

第12章 日本の会計基準と企業会計体制
第1節 企業会計体制概念
第2節 戦前における企業会計体制
第3節 戦後占領期における企業会計体制構想の崩壊
第4節 講和独立後の企業会計体制
第5節 今日の企業会計体制

著者紹介

千葉 準一(ちば じゅんいち)
[プロフィール]
1947年~2011年
東京大学大学院経済学研究科博士課程修了
東京都立大学名誉教授・首都大学東京名誉教授
経済学博士(東京大学)

[主な著作]
“Japanese experience of corporate accounting control c.1939–c.1945,”Accounting, Business and Financial History, Vol.6,No. 2,pp.163-182.(1996年)
“The Designing of Corporate Accounting Law in Japan after the Second World War,” Accounting, Business and Financial History, Vol.11,No.3,pp.311-330.(2001年) 他

『会計の基礎構造』(森山書店,1980年)
『英国近代会計制度―その展開過程の探求』(中央経済社,1991年)
『株式会社会計』(中央経済社,1999年)
『会計と会計学の歴史』(共編著,中央経済社,2012年)他

中野 常男(なかの つねお)
[プロフィール]
1951年生まれ
神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了
神戸大学大学院経営学研究科教授
博士(経営学)

[主な著作]
『会計理論生成史』(中央経済社,1992年)
『アメリカ現代会計成立史論』(共著,神戸大学経済経営研究所,1993年)
『複式簿記会計原理』(第2版,中央経済社,2000年)
『20世紀におけるわが国会計学研究の軌跡』(共編著,白桃書房,2005年)
『複式簿記の構造と機能―過去・現在・未来』(編著,同文舘出版,2007年)
『会計と会計学の歴史』(共編著,中央経済社,2012年)他

担当編集者コメント
 本書の制作中に千葉準一先生がお亡くなりになりました。第13章「日本の会計基準と企業会計体制」が遺稿となりました。
著者から
 専門分野としての形成期から実務主導型の性格を色濃く有していた「会計」において,「会計の歴史を学ぶことが会計人にとって何の役に立つのか」という問いに答えることは,歴史研究一般よりも困難であろう。しかし,あえて記すとすれば,会計史の知識は,会計人にとって,その専門的知識に対置されるべき一般的知識としての「教養」であり,「コモン・センス」ということになろう。
 歴史研究からは変化のみが恒常的であることが示される。会計史は,「会計」という人間の営む行為そのもののアイデンティティを時間軸に沿って再確認することであり,そのことにより,未来への展望を承けて過去を再解釈することを可能とするだけでなく,現在(と未来)の問題を考察するための視点を提供するものとなろう。