【市場再編に備えよ】『税務弘報』2021年8月号T.REVIEW

税務弘報

 『税務弘報』2021年8月号の巻頭言T.REVIEWは【企業と株主・投資者のための新たな市場への再編】です。


 来年4月に迫った東証新市場区分への一斉以降。これまでの市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQがなくなり、新たにプライム市場・スタンダード市場・グロース市場が誕生します。2013年の東証と 大阪証券取引所(当時)の統合以来の大改革であり、各企業では対応の準備が進められています。
 今号の巻頭言には、東京証券取引所の上場部で市場再編を牽引する林様に、その意義とポイントを解説いただきました。


執筆者

林 謙太郎
(㈱東京証券取引所 上場部長)


新市場区分の概要は?

 日本取引所グループは、今回の市場再編の目的を次のように説明しています。

「日本取引所グループは、現在の市場区分を明確なコンセプトに基づいて再編することを通じて、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供することにより、豊かな社会の実現に貢献することを目的として、市場区分の見直しを行います。」

 具体的には以下の3つの市場区分に再編されます。

【プライム市場】グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場。
【スタンダード市場】公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場。
【グロース市場】高い成長可能性を有する企業向けの市場。ここを念頭に、ベンチャー企業の事業計画や成長可能性に関する充実した情報開示の実務がスタートしています。

 新市場区分では、各市場区分のコンセプトに応じ、時価総額(流動性)やコーポレートガバナンスなどに係る定量的・定性的な基準を設けられます。

 また、2021年6月11日に施行された「改訂コーポレートガバナンス・コード」も要チェックです。これは、東京証券取引所が実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもので、市場区分に応じて対象範囲(基本原則/原則/補充原則)は異なりますが、コンプライ・オア・エクスプレインが求められます。
 本コードの改訂をもって一連の上場制度の整備が完了しました。

 現在上場している企業は、各市場区分のコンセプトや上場基準を踏まえ、移行時に新たな市場区分を主体的に選択することとなります。その際、現在の市場区分と選択先の市場区分の組合せに応じ、異なる手続を適用されるとのこと。
 新規上場を検討している企業も、新たな上場基準をチェックする必要がありますね。

 具体的な上場/移行基準・実務対応は、日本取引所グループが公表している資料をご参照ください。
(出所:日本取引所グループ「市場構造の在り方等の検討」


移行までのスケジュール

2020年12月25日
 「第二次制度改正」制度要綱公表
 ※2021年2月26日までパブリックコメントを実施
 ※4月30日に有価証券上場規程等の一部改正について公表
2021年4月7日
 「第三次制度改正」制度要綱公表
 ※2021年5月7日までパブリックコメントを実施
6月30日
 移行基準日
9月~12月
 上場会社による新市場区分の選択申請手続
2022年1月中
 移行日に上場会社が所属する新市場区分の一覧の公表
4月4日
 一斉移行日
(出所:日本取引所グループ「市場区分見直しに向けたスケジュール」


リンク

市場再編の議論や公表物はこちらにまとめられています。
 →【日本取引所グループ】「市場構造の在り方等の検討」
改訂版コーポレートガバナンス・コードはこちら。
 →【日本取引所グループ】「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」



 関与先に直接の関係がなくとも、どこかでつながっているのが経済社会。本格的な移行の前にポイントをチェックしてみてはいかがでしょうか。











関連コンテンツ

 当サイト「ビジネス専門書Online」の6月特集【コーポレートガバナンスを学びなおす】では、市場再編に深くかかわるコーポレートガバナンス・コード関連の書籍を紹介しています。担当編集者による紹介・編集秘話をぜひご覧ください。

まとめページはこちら→ 【6月特集】コーポレートガバナンスを学びなおす

ラインナップは下記のとおりです。
第1回 『SDGsの本質』
第2回 『ボード・サクセッション』
第3回 『シリーズダイバーシティ経営』
第4回 『本気で取り組むガバナンス・開示改革』
第5回 『コーポレートガバナンス改革と投資家との「対話」』
第6回 『たかが会計』


関連雑誌

『企業会計』2021年8月号 特集 
市場区分見直しの衝撃

 新市場区分の選択申請手続を目前に控えた今、会計の視点から市場再編のポイントを解説。上場企業のみならず、上場を検討している企業に関与する実務家の皆様、必見です。

 


・東証解説 市場区分見直しに向けた実務上の留意事項
 深津寿仁杏(㈱東京証券取引所 上場部 制度推進・管理グループ課長
・なぜ市場区分の見直しが必要か
 川北英隆(京都大学名誉教授・特任教授)
・少数株主保護への対応
 西山賢吾(㈱野村資本市場研究所 主任研究員)
・独立社外取締役3分の1以上の意義とその役割
 江川雅子(一橋大学特任教授)
・投資家にとって「望ましい市場」となるために
 神山直樹(日興アセットマネジメント㈱ チーフ・ストラテジスト)

 また、コーポレートガバナンス・コードで注目される「サステナビリティ」ついては、下記の号で取り上げています。
2021年7月号 特集「CGコード改訂の大黒柱! サステナビリティ経営を支える資本コスト」
2020年9月号 特集「数字と組織で考える 不確実環境下のサステナビリティ経営」



  • 『企業会計』2021年8月号
  • 『企業会計』2021年8月号
    定価:2,750円(税込)
    発売日:2020/07/05
    特集:市場区分見直しの衝撃
    特別企画:気候変動の情報開示
    対談:日銀ETF問題


2021年8月号 特集2 
論点別 改訂コーポレートガバナンス・コードの速報解説

 法務の視点から本CGコード改訂案の内容を速報的にお届け。上場会社は、東京証券取引所が定める有価証券上場規程および有価証券上場規程施行規則に基づき、遅くとも2021年12月末までに本CGコード改訂案の内容に沿ったコーポレート・ガバナンスに関する報告書を提出する必要があります。

 


・取締役会の機能発揮/企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
 賜 保宏(野村綜合法律事務所 弁護士)
・株主総会関係等
 森山弘毅(野村綜合法律事務所 弁護士)
・サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み
 石鍋謙吾(野村綜合法律事務所 弁護士)
・グループガバナンスの在り方/政策保有株式の取扱い
 岡島直也(野村綜合法律事務所 弁護士)
・監査に対する信頼性の確保/内部統制・リスク管理
 池原元宏(野村綜合法律事務所 弁護士)
・事業ポートフォリオの基本方針等
 森山弘毅(野村綜合法律事務所 弁護士)



  • 『ビジネス法務』2021年8月号
  • 『ビジネス法務』2021年8月号
    定価:1,700円(税込)
    発売日:2020/06/21
    特集1:「利用規約」審査・運用の実務ポイント
    特集2:改訂コーポレートガバナンス・コードの速報解説
    特集3:改正プロバイダ責任制限法への実務対応










\\電子版 最新号の更新が早くなりました!//

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