『たかが会計―資本コスト、コーポレートガバナンスの新常識』(2021年6月号特集)

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『たかが会計―資本コスト、コーポレートガバナンスの新常識』(2021年6月特集)

2021年6月11日、「コーポレートガバナンス・コード」と「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂版が公表されました。企業と投資家、さらには社会やそれらを取り巻く会計士や税理士といったプロフェッショナルにとって重要な内容が盛り込まれています。
本特集では、改訂の重要ポイントを理解するのにおすすめの書籍を紹介します。
今回は、コーポレートガバナンスを高めるうえで、示唆に富む一冊をご紹介します。

Q1 本書の内容を教えてください。

資本コストやコーポレートガバナンスについて世界標準の理論・研究成果を紹介し、世間の常識を覆す、いわば禁断の書です。
例えば、昨今は「資本コストを意識した経営」が求められていますが、その資本コスト自体は日々変動しており推定が難しいこと、利益最大化企業が高確率で倒産しまうこと、社外取締役の導入が必ずしも良い結果をもたらさないこと、といった「新常識」を紹介しています。現在国主導で進められているガバナンス改革に一石を投じるような内容になっています。


『たかが会計』帯


Q2 本書のテーマが重要視される背景を教えてください。

2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂では、事業セグメントごとの資本コストも踏まえた事業ポートフォリオの検討を含む経営資源の配分が一層必要になると考えられており、「資本コスト」の正しい理解が求められています。
また、本書では、社外取締役の選任についても、コードがそれを求める理由にやや懐疑的な見方をしていますが、形式的な対応を超えたところでコンプライorエクスプレインを行うために本書の内容はきっと役立つはずです。




Q3 本書はどのような人に、あるいはどのような場面で読んでいただきたいですか?

本書は、月刊誌『企業会計』の連載を書籍化したものですが、当時同誌の別企画で、コニカミノルタ㈱の取締役会議長(当時)・松﨑正年様にインタビューする機会がありました。そこで、松﨑様が「コードに対応するという目的で自社のコーポレートガバナンスを捉えることは、非常に形式で次元の低い話」「本来、それぞれの会社が日ごろから考え、取り組むべきもの」とおっしゃったのです(2016年11月号115頁)。
 このように、単なる制度対応を超えて、真の企業価値の向上を考えられている方に、本書を届けたいです。




Q4 本書のこだわり、ポイントを教えてください。

ここまで本書がガバナンス改革にやや批判的な立場で書かれていることを紹介しましたが、単なる批判に終始しません。
市場のインフラとして目立たない「たかが会計」が果たす重要な役割について、会計への大きな愛をもって説きます。




Q5 読者の方へのメッセージをお願いします。

紙幅、いやWEB幅(?)が尽きました。でも熱いハートは伝わっているんじゃないかと信じています!