書評
『旬刊経理情報』2023年3月10日号 の書評欄(「inほんmation」・評者: 三木 久生 氏)に『CFOとFP&A 』( 石橋 善一郎・ 三木 晃彦・ 本田 仁志 〔著〕 )を掲載しました。
2014年に経済産業省より伊藤レポートが公表されて以降、企業価値向上が企業の大きなテーマとなって久しい。そのなかで、CFO(ChiefFinancial Officer:最高財務責任者)の役割は、従来の経理財務担当役員の延長にとどまらず、CEO(ChiefExecutive Officer: 最高経営責任者)のビジネスパートナーとして、重要性が増しており、高い専門性が必要である。多くのグローバル企業では、CFOを支える組織として、FP&A(Financial Planning &Analysis)組織が経営管理を担当しており、その構成員であるFP&Aプロフェッショナル(専門職業人)がCFOを目指してキャリアアップしていくが、日本企業ではそのような組織の設置もプロフェッショナルの育成もまだまだ途上である。
本書の著者3氏は、グローバルおよび日本企業においてFP&AからCFOまでキャリアアップする過程で職業人団体(日本CFO協会と米国管理会計士協会)を通じて知己を得て、現在も日本CFO協会のFP&Aプログラム運営委員会で運営委員として活躍中である。CFOや大学教授・顧問としての本業が忙しいなかでも、勉強会・講演会などの活動を積極的に続けており、同じ運営委員である筆者が尊敬してやまない存在の方々である。このような3氏が、旬刊経理情報(2021年12月1日号、12月10日(No.1629、1630))掲載の座談会「CFO組織・経理部が担う経営管理への取組み」をきっかけに、FP&Aプロフェッショナルのキャリア形成や日本企業におけるFP&A組織の確立・発展を強く願って書き上げた本書は、まさに渾身の一冊といえるであろう。
著者の1人、石橋氏は、「『組織としてのFP&A』は、国や業界や組織によって異なるが、『プロフェッションとしてのFP&A』は国や業界や組織を超えて共通である」という認識をかねてより強く持っている。本書では3氏の豊富な経験、国内外企業の事例をもとにした鋭い洞察を通じて、この認識が理解できるとともに、読者が所属する企業の組織や自身のキャリアと照らし合わせることができる。そして、本田氏の「日本企業の強みである『現場力』とFP&Aを実装した『経営力』の両輪を機能させる時、日本企業は復活する」という確信や、三木氏の「結果責任と独立性を保持した『真のビジネスパートナー』として企業価値向上に寄与するFP&Aの役割には大きな可能性がある」という実感など、未来の可能性に向けた強いメッセージが心に刺さる。
本書は、CFOを目指す方々のキャリア形成の一助になるだけでなく、企業価値向上のために日々の業務を邁進されている経営企画・経営管理・管理会計に携わる方々にも役立つ一冊である。ご興味を持たれた方はぜひ前記座談会も合わせて参照されたい。また、本書ではあまり触れられていないFP&Aが関わる管理会計業務については、石橋氏の『経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門』を教科書とされることをお薦めする。
三木 久生(㈱リクルート 事業統括室室長)
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