『改正電子帳簿保存法のすべて』(『旬刊経理情報』2021年12月20日号)

書評

改正電子帳簿保存法のすべて旬刊経理情報』2021年12月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:両國 泰弘 氏)に『改正電子帳簿保存法のすべて』(十文字 俊郎 〔著〕)を掲載しました。







2021年度税制改正による電子帳簿保存法の改正は、個人法人すべての事業者の方が対象となる重要な法律改正となっている。

今まで電子帳簿保存を検討したが、あきらめていた方は必見となっている。

私が十数年ほど前に国税局の電子帳簿保存担当の課長になったときに、周りの皆さんから電子帳簿保存は厳しすぎて利用できないといった声が多かった。何とか利用できるようにしたいと考え、国税庁ホームページに申請が承認できる場合とできない場合とに分けて発表する業務の一翼を担い、理解を得るようにしてきた。

このたびの改正は、今までの多数の方の要望を踏まえた抜本的大改正となっている。

本書は全事業者が理解しなければならない電子帳簿保存法について、国税局で長年電子帳簿担当として、また税務調査のエキスパートとして活躍してきた十文字氏がこれまでの経験のすべてを注ぎ込んだものとなっている。

十文字氏が特に力を注いだのは、今までの解説書にはない、十文字氏自身で考案した、読者が理解しやすいオリジナルな資料をたくさん入れた点である。

本書を少し解説すると、読者の理解度を図るために序章(電子帳簿保存制度の常識)においてクイズ形式の問題を60問入れた構成が特徴的である。

回答や解説も丁寧に記載され、読者は理解が追いついていないところがわかるため、制度を理解するために特に注意しなければならないところを集中的に勉強することができる。

また、たくさんの先生方が解説書を書いているが、十文字氏は税務調査のエキスパートであったので、その経験を踏まえ、注意すべき点にも触れている。第5章では税務調査で想定される問題点を記載しており、一般の解説書にはない大変貴重なものである。税理士の皆様にとっても大変参考となるはずだ。

十文字氏は、2000年に国税局の各部から精鋭を集めた電子商取引専門調査チーム(※)の一員として、当時新しい電子商取引に対して国税の先鋒として職員に貴重な情報を提供していた優秀な人材であった。

きっと、本書は企業の実務担当者の方や税理士の方はもとより、税務職員の皆様にも利用していただけるのではないかと信じている。

十文字氏の全力を尽くした初めての書下ろしを読んでいただき、今後の税務申告に役立ててくださることを願っている。

なお、十文字氏は、中央経済社から発刊されている『税務弘報』2021年12月号「改正電子帳簿保存法の施行の前に」(座談会)では、企業の担当者も交えて個人法人の専門の税理士とともに現場の問題意識について、より詳細に語っている。

ぜひ、本書と同時にこの雑誌も読むことで、もっと興味深く本書を読み電子帳簿保存法を理解することができるだろう。

(※)参考: 通称 P R O T E C T(ProfessionalTeam for E-Commerce Taxation)

両國 泰弘(両國泰弘税理士事務所 代表 税理士)