『気象予報士が教える 天気×業績予想・開示の実務』(『旬刊経理情報』2026年7月20日号掲載書評)

書評

気象予報士が教える 天気×業績予想・開示の実務 旬刊経理情報』2026年7月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:堀田 一吉 氏)に『気象予報士が教える 天気×業績予想・開示の実務』夏目 宏之〔著〕を掲載しました。







天気は、私たちが思っている以上に経済活動にさまざまな影響を与えている。晴雨や気温の変化によって人々の行動は変わり、商品の売行きや企業業績も左右される。近年は異常気象が頻発し、その影響は農業、物流から消費活動にまで及び、経済全体を大きく揺るがしかねない状況にある。

こうした時代において、天気を単なる自然現象としてではなく、経営に関わる重要な情報として捉えることの意義は、ますます大きくなっている。天候の変化が売上にどのような影響を与えるのかを把握できれば、事業者は需要の動きをより的確に予測し、商品戦略や経営判断に活かすことができる。

気象データを活用することは、売上を拡大させるだけでなく、事業リスクへの対応という観点からも重要な役割を果たしている。

本書は、三部構成となっている。まず、「第Ⅰ部 天気の仕組みを理解しよう」では、天気を決める基本的な要素や、地球温暖化、エルニーニョ/ラニーニャ現象など、中長期的・短期的な気象メカニズムについて、基礎からわかりやすく解説している。続く、「第Ⅱ部 天気に関するデータを活用して分析しよう」では、気温変化と商品の売上との関係を、基本的な統計手法を用いて定量的に分析するための、実践的な手法を紹介している。そして、「第Ⅲ部 分析結果をうまく伝えよう」では、気象要因に関する分析結果をどのように消費者や投資家に伝えるべきかという観点から、情報開示の重要性について論じている。

本書の特徴は、たい焼き店「わんこ庵」という架空の店舗を題材に、親しみやすい事例を通じて読者の理解を深めている点にある。

そのため、読者は専門的な統計分析や気象学の知識がなくても、「気温が1度変わると売上はどう変わるのか」といった身近なテーマを通じて、天気と事業経営を結び付けて考える視点を自然に学ぶことができる。

気象データを経営判断に組み込むことは、単なる業務効率化ではなく、経営上のリスクマネジメントそのものと位置づけるべきであろう。気象予測は、売上拡大のための経営情報であると同時に、損失を未然に防ぐための重要な情報でもある。事業経営においては、天気を理解することが、リスクを認識し、需要を予測し、将来の経営判断を的確に行うための鍵となるのである。

近年はAIを活用した経営手法も急速に発展し、気象情報を取り入れた高度な経営分析が広がりつつある。しかし、経営者に求められるのは、AIに盲目的に判断を委ねることではなく、その前提となる基本的な理論や分析の枠組みを自ら理解することである。

AIを有効に活用しながらも、最終的な意思決定は経営者自身が下す。そのような自律的経営の重要性は、今後さらに高まっていくであろう。その意味でも、本書から読者が得られる知見は大きい。ぜひ多くの方に手に取っていただきたい一冊である。

堀田 一吉(慶應義塾大学 名誉教授)

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