書評
『旬刊経理情報』2026年6月1日合号の書評欄(「inほんmation」・評者:柴田 叙男 氏)に『減損テスト 現場の教科書』菅 信浩 〔著〕を掲載しました。
本書は、現在そして今後、IFRSの減損テストや無形資産評価にかかわる現場の実務者のため、特に、これらをインハウスで実施しようとする際に、必要となるさまざまな情報(ラストワンマイル)を網羅的に提供しようとする画期的な実務本である。また、日本基準の減損テストも意識した記述がされている。
本書を通して読者は、減損テストに関係する概念・用語・計算方法や論点を理解しプロジェクトとしての減損テストをイメージできるが、特に特徴的な点を紹介する。
「第Ⅱ部 減損テスト」では、減損テストに関わる減損テストの前提となるファイナンスの理論、具体的な概念、パラメーターについて丁寧な解説がされている。これらの概念等は、これから減損テストに関わる方にとっては必須の概念であり、これまで減損テストに関わった経験のある方の双方においても網羅的な理解のための復習になる点で有益である。具体的なリソースの紹介もされており、減損テストに必要なデータを、どのようにして適切な外部の情報源から入手・加工し、必要なパラメーターに変換していくのかも含めて丁寧な解説がされている。
「第Ⅲ部 無形資産」では、実務的にも難易度が高いPPA、無形資産の認識と測定の理論と実務を取り上げている。本書で紹介されている計算モデルは、多くの実務家にとっても参考になるものと想定される。
「第Ⅳ部 第14章 事業計画の策定」では、事業計画と財務モデリングについて解説をしている。あくまで例示ではあるが、KPIツリーの積上げによる事業計画策定の重要性を説いている。減損テストの根幹にあるのは、当初策定時の事業計画であり、モデルの精緻さが、その後の実績との乖離の分析に寄与し、あわせて、不確実性を考慮した財務モデリングの重要度は強調するもなお余りがある。
「第Ⅳ部 第15章 関連する他の会計上の論点」は、会計上の見積りの観点で用いられるパラメーターは、複数の会計基準の目的から類似、また、相違することがあり、その違いを理解して、同一の財務諸表では全体的に整合性のある説明することの重要性を解説している。
加えて、本書の特筆する点として、各所の「監査法人の代表的質問の例示」が取り上げられている点を挙げたい。減損テストは、監査人としては、監査基準報告書540「会計上の見積りの監査」に従った対応をしなければならない分野であり、このような監査人とのやり取りは実務では外せない部分である。
最後に、減損テストは、時として、価値算定の専門家の専門知識に頼る部分が多いが、実務担当者としては、まずは自ら減損テストの知識を獲得し習熟することが重要かと思われる。それは、いわば「減損テストの民主化」であり、それに取り組むための決算実務に携わる必読の良書として、本書を紹介させていただきたい。なお、本書のエクセルデータはダウンロード(有料)が可能である。簿記と同様に実際に手を動かすことが理解や応用につながる。お手元で試行することをぜひお薦めする。
柴田 叙男(千葉商科大学大学院客員教授・公認会計士)
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