『何が変わる? 新リース会計の実務―影響と対応』(『旬刊経理情報』2026年3月20日特別増大号掲載書評)

書評

何が変わる? 新リース会計の実務―影響と対応 旬刊経理情報』2026年3月20日特別増大号の書評欄(「inほんmation」・評者:茂木 哲也 氏)に『何が変わる? 新リース会計の実務―影響と対応』EY新日本有限責任監査法人〔編〕を掲載しました。







2024年9月に公表された「リースに関する会計基準」の、強制適用(2027年4月1日開始事業年度から)まで、残すところあと1年ほどとなった。実務家のみなさんにおかれては、準備作業を着々と進められていることと思う。基準の公表から強制適用まで2年半もの期間が設けられていることは、この新たなリース会計基準が広範であり、多大な準備を必要とすることを示している。このような準備を進めるにあたって、本書は実務家の期待に応える1冊であると思われる。本書の特長は、実務への適用におけるポイントを丁寧に解説した実務書であることはもちろん、会計基準それ自体についてもしっかり解説された基本書としての性格を併せ持っていることである。

各章の冒頭に「改正点と影響」が簡潔にまとめられている。実務への適用において実務者の興味は、「何が変わるのか」ということが第一である。この興味に対応する書籍であることを本書は題名で宣言しており、本書の内容はその題名に違わない。

各章冒頭のまとめは、実務に適用するにあたっての重要なポイントを理解するのに役立つであろう。また、各所に「これまでの実務からの変更点」が記載されており、決算実務に影響を及ぼす可能性の高い変更点が簡潔にまとめられている。さらに、各章に記載されている「実務上のポイント」は、適用時の実務上の留意点などを理解するのに役立つ。設例を用いた解説も多く含められており、実際の取引に適用する際の参考になるものと思われる。

その一方で、新リース会計基準開発の経緯、基本的な方針から会計基準の具体的な定めまで、網羅的かつ、バランスよく記載している。会計基準を的確に適用するには、基準開発の経緯、背景を踏まえた会計基準の基本コンセプトや全体像の理解が必要となる局面がある。基準の基本的な考え方などに関する本書の記載は、このようなときに役立つものとなろう。

また、本書では、リース会計基準の解説のみならず、関連する重要論点である固定資産の減損会計や連結決算への影響について、独立した章を設けて詳細に解説している。新基準の影響を広く把握するという目的において、このような観点からのまとめが含められていることは、実務家の大きな助けになるであろう。

さらに、付録としてつけている表示・開示のチェックリスト、IFRS16号との差異の一覧表、業種別に特有な論点の一覧表も本書の特長といえるかもしれない。

370ページと厚くなっている本書であるが、読み進めるうえでの負担感はあまり感じない。それは、図表や設例を多く取り入れることや、平易な表現を用いることで、読者が手に取ることの精神的障害を取り除こうとする執筆者の努力によるものだと思われる。細かくセクション分けされた目次は、本書を辞書的に使うことも可能とする。財務担当役員、経理部門の責任者、担当者はもちろんのこと、総務部門などの契約を管理する部門や設備・什器などを管理する部門の責任者、担当者にとっても有用な1冊と思われる。

茂木 哲也(公認会計士)

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