『企業不正の調査実務〈第2版〉―徴候の検知から調査技術、事後処理まで』(『旬刊経理情報』2026年2月20日号掲載書評)

書評

企業不正の調査実務〈第2版〉―徴候の検知から調査技術、事後処理まで 旬刊経理情報』2026年2月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:結城 大輔 氏)に『企業不正の調査実務〈第2版〉―徴候の検知から調査技術、事後処理まで』株式会社 KPMG Forensic & Risk Advisory〔編〕を掲載しました。







会計不正、データ偽装、情報漏洩など、企業不正事案の調査では、第三者委員会や特別調査委員会等による迅速かつ精緻な対応が必要となる。かかる業務を取り扱う実務家として、事案が動き出した〝有事〟には1分1秒を争う状況となるため、調査実務に精通し、阿吽の呼吸で各自の役割を遂行できる体制が必要不可欠となる。そのため、日頃から有事に備えて、調査の実務を網羅的に俯瞰でき、また詳細や論点を深掘りできる「この1冊」を手元に置いて研鑽することが重要となるが、このように網羅的かつ実践的な内容を備えた実務書に巡り合うことは決して容易ではない。

その意味で、2012年に出版された「企業不正の調査実務」(初版)は企業不正調査の体系的実務書として広く参照されてきた。そしてこのたび、その後の実務の変化や発展を反映して、多くの実務家が待望していた本書第2版が出版された。

本書の最大の特長は、企業不正調査の「実務」に徹底的にこだわり、会計不正をはじめとするさまざまな不正事案におけるフォレンジックやデータ分析を中心とする著者の豊富なノウハウを余すところなく紹介している点にある。

特に「第2章 不正の類型と手口」、「第3章 不正の徴候」で、不正の手口を整理するとともに、購買・販売の取引にどのような兆候があると不正が疑われるか、会計仕訳に現れる兆候は何か、個人の様子や生活における兆候は何か、といった項目がわかりやすく列挙されている点が特徴的である(本書58頁以下の主な不正の兆候の一覧は、実務家にとって大いに助けとなる)。

「第6章 不正調査の技術」もまた実務家必読のパートである。不正調査における仮説検証アプローチに負の影響を与えかねないバイアスへの対処法や、デジタルフォレンジック調査による電子的証拠収集の概観は、不正調査を成功に導く鍵である。また、新たに追加された「データ分析」は、初版刊行後の実務の進化の象徴であり、40頁をかけて、データ分析の手順から、不正類型ごとの典型シナリオを明らかにし、会計不正その他の合計10のケースにおけるデータ分析の具体的活用例を徹底的に解説している。

本書の特長であるケーススタディは次の「第7章 不正調査のケーススタディ」でも続き、40頁以上を使って、どのような調査手続によって何が判明したのかを解説しており、有事対応の鮮明なイメージをつかむことができる。

他にも、クロスボーダー調査(第9章)、M&Aにおける不正対応(第10章)、品質不正事案の特徴(第11章)など、各論としての重要事案も深掘りされている。

不正発覚後の有事の調査案件に直面する企業や外部専門家はもちろん、有事に備えた日頃からの取組みや研鑽を重視する実務家にとっても、ただちに活用できる実務書である。企業の命運を左右する不正対応の実務を網羅的・俯瞰的に理解するための決定版、まさに「この1冊」である。

結城 大輔(のぞみ総合法律事務所 弁護士(日本・ニューヨーク州)・公認不正検査士(CFE))

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