『目的&ケース別M&A・組織再編成の税務ストラクチャー徹底比較』(『旬刊経理情報』2023年11月20日号掲載書評)

書評

目的&ケース別M&A・組織再編成の税務ストラクチャー徹底比較 旬刊経理情報』2023年11月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:石毛 章浩 氏)に『目的&ケース別M&A・組織再編成の税務ストラクチャー徹底比較』(蝋山 竜利・中島 礼子・小林 誠〔著〕)を掲載しました。







「最適なM&A・組織再編成は何ですか?」会計・税務の専門家にとってこれほど悩ましい質問はないと思われる。クローズドクエスチョン(Aに税務リスクはありますか?)は、深掘りさえすれば、着地点がみえてくることが多い。少なくとも、論点が明確ならば問題の半分は解決したも同然であろう。一方、オープンクエスチョン(Bについてどう思いますか?)に対して適切な答えを出すためには、幅広い税務の知識・経験が必要である。それがM&Aや組織再編成となると、そもそも内容が高度なうえに、選択肢が多岐にわたり、最高難度の問題といえよう。

さらに、M&Aの買い手のときなどは、税効果や税務リスクが、「買い」か「見送りか」の会社の意思決定に影響を及ぼすことが多々ある。やりがいの高い分野であると同時に、これほどに怖い分野はない。

本書「目的&ケース別 M&A・組織再編成の税務ストラクチャー徹底比較」はそのような悩みを解決する、まさに魔法の本である。執筆者は大手税理士法人にて数多くのM&A・組織再編成を手掛けているが、経験に裏打ちされた実例を余すことなく紹介し、「これを書籍として販売してしまってよいのか⁉」が、読了後の最初の感想であった。

まず何といっても、取り上げられているケースの多さと、そのケースへの対応手法を数多く紹介している点が、本書最大の魅力であろう。再編後の資本関係が同じ形態になったとしても、採用する手法によってその過程は全く異なる。そして、過程が異なることで課税関係も全く異なる。税務スキームを構築する際に苦心する点は、課税関係を正確にかつ網羅的に整理することである。この点を、M&Aや組織再編成に初めて取り組む方にもわかるように概括的に検証したうえで、これほどまで網羅的に、そして詳細にケースを捉えている書籍をみたことがない。

そして、各ケースに設けられている課税関係の詳細では、数値例・仕訳例が多く記載されている。実務家が欲している情報は、まさにこの点である。著者の書籍は、税務上の仕訳例にまで言及しているものが多いが、これほど多くのケースを用意したうえで、数値例・仕訳例まで詳細に解説されている点は、見事としかいいようがない。また、「コラム」や「研究」として比較的ソフトに記載されている項目にも、しっかりとノウハウが詰め込まれている。これを知っておくだけでもかなりの付加価値になる。

しかし、これほど「うんうん、なるほど」とうなずきながら読める本は稀有である。著者の専門知識、経験値にはいつも舌を巻くばかりである。M&Aや組織再編成に多く従事している方には必ず気づきがあり、読み応えのある本であると断言できる。一方、これからM&Aや組織再編成に取り組んでみたいという方にとっても、ケースごとに図や数値例をふんだんに使用していることでイメージがわきやすい構成となっており、お勧めしたい。M&Aの「買い」の判断は難しいが、少なくともこの書籍は「買い」である。

石毛 章浩(公認会計士・税理士)

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