『経営危機時の会計処理―レオパレス21は難局をどう乗り越えたか』(『旬刊経理情報』2022年11月10日号掲載書評)

書評

経営危機時の会計処理―レオパレス21は難局をどう乗り越えたか
旬刊経理情報』2022年11月10日号の書評欄(「inほんmation」・評者: 内山 峰男 氏)に『経営危機時の会計処理―レオパレス21は難局をどう乗り越えたか 』( 日野原 克巳〔著〕 )を掲載しました。







本書は不祥事に揺れる㈱レオパレス21の会計・監査上の課題に対して、果敢に取り組む財務経理部所属の公認会計士による著作である。不祥事が起きた会社は、世間に名の知れた会社ほど、マスコミに叩かれ、風評被害による会社のイメージ失墜により、業績に悪い影響を与える。そして時が過ぎ、真相は語られることなく悪いイメージだけ残して忘れ去られてしまうのが常である。

しかしこの間、社内では、特に不祥事に関わりなく働いてきた人は、打開策を見出そうと、次から次へと湧き起こる事態に、苦悩の日々を過ごしたに違いない。思いつくのは、お決まりの引当金の積増し・減損損失の計上、繰延税金資産の取崩し、債務超過による継続企業の前提の開示、業績悪化への悪循環という会社倒産にいたる悪夢のストーリーである。

本書においては、このような悪夢のストーリーを章立てとし、ビジネスモデルや、会計処理についての詳しい資料を添付したうえで、解説がなされている。また、現場での生々しい課題への取組みや監査法人との攻防などがドラマのように描かれており、まるで現場にいるような感覚になることがたびたびあった。普段経験することのない、このような内容を担当者自ら著したことは、評者の知る限り初めての試みではないかと思う。

著者は財務経理部所属とはいえ、監査法人で実務経験を積んだ公認会計士である。この経験から会社の立場、監査人の立場を理解できる人物であり、プロ目線で会社の内部からの会計事象について記述している。

最近では、著者のような組織内会計士が年々増えているという。会計の専門家が企業に所属することにより、会社が筋肉質になることは望ましいことであり、組織内会計士の活躍が期待される理由が十分に理解できる。

要求される会計の水準が高まるなか、経理人材の育成は、急務となっている。著者も前書きで、執筆動機として経験の浅い若手経理担当者の教材として利用してもらいたい旨を述べていたが、十分応え得る内容である。また、経理実務の担当者の気持ちを理解するためにも、監査を担当する公認会計士や将来会計の専門家を目指す学生にとっても、役立つ書籍である。

近年、株主との対話が企業価値を高めるために重要であると説かれている。本書を読んで特に感じたことは、筆者が繰り返して述べているように、共に働くスタッフや役員、取引先、監査法人等々、会社を取り巻く多くの利害関係者とのコミュニケーションの取り方や計画的に誠意を持って論理的に説明することの重要性である。説明は得てして言い訳になり、ともすれば悪循環に陥る。そしてタイミングも大事である。

このことなくして、㈱レオパレス21も難局を乗り切ることはできなかったであろう。きっと会社復活への一筋の光を見出したときの喜びは格別であったはずだ。会社の不祥事は何時起こるかわからない災害と同じである。備えとしてもぜひご一読をお勧めしたい。

内山 峰男(公認会計士・駒澤大学客員教授)

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