『社外役員の実践マニュアル―選任・再任・退任の実務と押さえておきたい社外役員の法務・財務知識』(『旬刊経理情報』2022年3月10日号)

書評

社外役員の実践マニュアル―選任・再任・退任の実務と押さえておきたい社外役員の法務・財務知識旬刊経理情報』2022年3月10日号の書評欄(「inほんmation」・評者:松林 篤樹 氏)に『社外役員の実践マニュアル―選任・再任・退任の実務と押さえておきたい社外役員の法務・財務知識』(弁護士法人トライデント〔編著〕)を掲載しました。







 企業経営において、コーポレート・ガバナンスがますます重要な意味を持つようになり、社外役員はその重要な要素と位置づけられている。本書は、社外役員である社外取締役と社外監査役の双方について、弁護士と公認会計士の両資格を保有する著者らが解説したものである。

 前半は「第1章 社外役員とは」に始まり、社外役員側の視点で「第2章 社外役員の実務対応」が書かれ、会社側の視点による「第3章 会社の社外役員への対応方法」へと続く。東証の市場区分の見直しやコーポレートガバナンス・コードの改訂のみならず、IT化やコロナ禍といった環境変化にも触れながら、第2章ではケース別実務対応として会社特性や発生事象に応じた考察がなされ、第3章では社外役員の見つけ方から社外役員の評価方法まで網羅的に解説されている。

 後半は「第4章 社外役員が知っておくべき法務知識」と「第5章 社外役員が知っておくべき財務知識」について、弁護士と公認会計士の両資格保有者らしく、バランスよく解説されている。第4章では機関設計や権利・義務といった会社法の基本的知識から、金商法や労働法、下請法といった企業経営で直面する論点が丁寧に解説され、第5章では財務諸表や税務の基本的知識から、非財務情報を含むディスクロージャー制度に加え、財務不正リスクの事例にも具体的に触れている。

 『社外役員の実践マニュアル』という題名からは、社外役員に就任される方や社外役員としての経験が深くない方が困ったときに開く書籍を想像していたが、社外役員と接する方が社外役員の立場を理解し社外役員の力を最大化させるためによい書籍である。企業経営の重要な意思決定は人的集団から行われるが、構成員たる社内役員と社外役員が相互に良好かつ健全な関係を築くために、社内役員の方々が一読されると有益であろう。

 また、担当部署は百社百様であるが、実質的に取締役会事務局機能を担っている方々にも有益である。もちろん、社外役員に就任された方、あるいは、経験を有する方が最近の動向を知る際にも有益だと思われる。この点、理解度を確認するために設けられた「チェックテスト」を活用してもよいだろう。

 昨今、社外役員についてはさまざまな解説や考察がなされているが、本書には「すべての会社に一律に当てはまる理想的な社外役員像というものは存在しない」とある。社外役員に株主の代表としての立場があるのは重々承知しているが、社内役員が社外役員に期待するのは、多様な役割のなかでも、健全なリスクテイクを実現するための助言が主であろう。

 法律と会計の両面から経営者に寄り添うとの著者らの理念が反映されている本書である。本書の改訂版には、社外役員が社内役員とともに健全なリスクテイクをどのように実現するかについて、経営の態様や状況、環境に応じた具体的な解説やさらなる考察がなされることを期待したい。

松林 篤樹(㈱エルテス 取締役)

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