『日米実務の比較でわかる 米国アウトバウンドM&A法務の手引き』(2021年10月特集第5回)

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2021年10月号特集受賞図書特集(2021年4月~9月受賞)

学会、経済関連団体より、2021年4月から9月に表彰された書籍5点をご紹介。担当編集者に書籍の内容や企画背景、受賞した賞について尋ねてみました。読書の秋に、最高水準の"知"の息吹を感じてみませんか。

今回は、M&Aフォーラム 第15回 M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』受賞書籍を紹介します。

Q1 本書の内容を教えてください。

米国アウトバウンド、つまり、日本企業が米国企業を買収する際の法務を扱っています。米国M&Aの歴史や日本企業による米国企業のM&Aを概観した上で、非公開会社、公開会社に分けて留意すべき実務を解説しています。
非公開会社においては、株式譲渡、出資取引、株主間契約、資産譲渡、そして合併と流れに沿って重要実務を取り上げています。
公開会社のM&Aでは、合併契約の内容、公開買付けの手続き、利益相反取引、敵対的買収と買収防衛策について詳細に展開しています。
また、どの国においても海外からのM&Aには「規制」がかかります。本書では米国特有の規制について、競争法、投資審査、腐敗行為防止法、個人情報保護法、インサイダー取引防止や経済安保の観点など各方面から解説しています。
後半の章では、M&Aに関する訴訟、アクティビストへの対応、財務的困窮企業のM&Aを扱うなど、米国におけるM&A法務の全体像を知る上で大変有用な一冊です。


本書の構成


Q2 本書を企画したきっかけや背景を教えてください。

日本企業によるアウトバウンドM&Aが増加している一方で、ふさわしい解説書が乏しかったからです。日本国内のM&Aに携わる法務担当者や弁護士等専門家としては、米国におけるM&Aは「日本とどう違うのか」という観点から理解したいところですが、米国M&Aを扱った良書であっても多くは米国弁護士によって著されており、なかなか日本人のニーズを満たしてくれないところがありました。
本書の著者である日本人7名はみな、米国でロースクール留学・司法試験受験を経てニューヨークのオフィスに勤務し、実際のクロスボーダー案件を数多く取り扱っています。そのため、本書はその知識と経験をもとにまとめた、きわめて実務的なものです。「米国に留学することなく知識と実務がわかる」という、実はとってもお得な内容なのです。


Q3 本書はどのような場面で読んでいただきたいですか?

実務書ですから、実務に携わる方が必要な時に必要なページを読むという場面が多いかと思います。通して読めば、米国のM&A法務について他の誰よりも詳しく頼もしい人になっているはずです!


「推薦の言葉」はぜひ本書を手に取ってご確認ください


Q4 本書のこだわりポイントを教えてください。

Q2と重複しますが、日本人弁護士によって、日本人に理解しやすいように解説している点です。
そして、米国に住んで現地の企業や弁護士とやりとりをしているからこそ書ける「米国ならでは」のポイントや、米国の最新法制、法務事情がふんだんに盛り込まれています。




Q5 読者へのメッセージをお願いします。

日本は米国の法律や契約実務を多く参考にしているため似ているところもありますが、本書を読むと、ことM&A実務では日本流があまり通じないことが分かります。アウトバウンドM&Aを検討する方(企業)にはもちろんお薦めしますし、M&Aの考え方や手続きを米国的観点から捉えることで、日本国内での実務の広がりも生まれると思います。ぜひご一読を!