『会計構造の深層論理―真の複式簿記システムの探究』(2021年10月特集第2回)

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2021年10月号特集受賞図書特集(2021年4月~9月受賞)

学会、経済関連団体より、2021年4月から9月に表彰された書籍5点をご紹介。担当編集者に書籍の内容や企画背景、受賞した賞について尋ねてみました。読書の秋に、最高水準の"知"の息吹を感じてみませんか。

今回は、「日本簿記学会 2021年度日本簿記学会学会賞」受賞書籍を紹介します。

Q1 本書の内容を教えてください。

簿記・会計では「交換取引」は、損益の増減をもたらさない取引であると一般的に理解されています。しかし、著者は疑問を抱くのです。つまり、「商品を購入する」行為と「現金を支払う」行為は、たんなる交換取引であろうかという著者の疑問です。お金を支払うということは、商品に何か価値を見出したということなのではないか、という観察でした。
本書は、取引の背後には深層的な構造が潜在し、この深層構造が会計理論において最も重要なものであり、理論構築の出発点は深層構造におくべきだと主張するものです。




Q2 本書を企画したきっかけや背景を教えてください。また、どのような場面で読んでいただきたいですか?

著者は、簿記を研究する会計学者です。およそ30点に及ぶ単著、共著、編著、翻訳書などを出版してきましたが、研究の集大成といえるものが本書です。

会計学研究者にとって、永く読まれる、また文献たりうる書であると思います。


Q3 本書が受賞した賞はどのようなものですか?

本書が受賞したのは「日本簿記学会」の「2021年度日本簿記学会学会賞」です。
「日本簿記学会」は簿記の研究および教育の振興をはかることを目的として設立された学会で、1985年1月19日に、明治大学において設立総会を開催し、発足しました。現在、簿記に関心をもつ研究者、教育者および実務家を会員として受け入れる開かれた学会として運営されるとともに、日本学術会議の協力学術研究団体にも指定されています。


Q4 読者の方へのメッセージをお願いします。

貸方、借方の簿記だけではありません。簿記を研究する余地はまだまだありそうです。難しい本ですが、チャレンジしてみては、いかがでしょうか。

弊社誌『企業会計』2021年1月号の書評(木戸田力先生・佐賀大学教授)では、「現代会計の諸問題に解決の糸口を与えうる画期的な著書として、会計記号論の視点からはむろん、会計学会からも高く評価されるものである」と評価いただきました。