『経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門』(『旬刊経理情報』2021年8月20日・9月1日合併号)

書評

旬刊経理情報』2021年8月20日・9月1日合併号の書評欄(「inほんmation」・評者:三木 久生氏)に『経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門』(石橋 善一郎〔著〕)が掲載されました。







「日本初のFP&Aをタイトルに冠した書籍を出版する」―筆者からの連絡は、永年FP&Aプロフェッションを歩んできた評者にとって、このうえない喜びであった。最近日本企業でも認知され始めてきたFP&Aの紹介にとどまらず、FP&Aプロフェッションとしてのキャリアを考える方にとって必読の書がようやく出版される―そして上梓された本書は、評者のイメージをさらに上回るものとなっていた。

筆者の石橋氏は、知名度の非常に高い日本企業とグローバル企業の数社でFP&AプロフェッションからCFOまで歴任しながら、MBAや数々の資格を取得している。CFO退任後も、FP&A関連団体の要職や大学院教授に就き、日本におけるFP&A啓蒙活動を精力的に行っている。まさにFP&Aの理論と実務を知り尽くし、熱意を持って評者をはじめ多くの人材を指導育成している、日本で唯一無二の存在である。

そのような筆者渾身の本書は13章構成となっているが、大きくは2つに分けられる。

第1章から第4章は、「FP&A」を組織とプロフェッションの面から紹介している。最初にグローバル企業における具体的な事例を踏まえ、組織としての役割を「真のビジネスパートナー」と「マネジメントコントロールシステムの設計者および運営者」の2つと明言し、以降の章の説明の起点としている。次に日本企業のFP&A組織が抱える、「本社における計画作成と測定の機能分断、本社と事業部のレポートラインの分断という2つの壁」と「中期経営計画、経理部、経営企画部の3つの機能不全」を、日本企業の独自性の観点から鋭く指摘している。

第5章から第13章までは、経営大学院や会計大学院で学ぶ管理会計と企業財務の基礎理論のうち、FP&Aプロフェッションに必要とされる分野が厳選解説されている。そのなかには、財務計画の前提となる「外部環境・内部環境」や「戦略」の分析や、「経営管理における計画・統制のプロセス」のような、「マネジメントコントロールシステムの設計者および運営者」にとって実務的な内容まで含まれている。また、これらは、日本CFO協会が実施する「FP&A検定」の副読本として精読すべき内容となっている。

本書を高く評価する点は、筆者もセールスポイントと自認しているとおり、豊富な経験・知見をもとにFP&Aプロフェッションにとって一番大切な事柄をわかりやすく説得力高く伝えているところであり、一般的な知識・スキル修得の参考書とは一線を画している。特に第1章から第4章および随所に散りばめられた9つの事例紹介は、筆者の経験と研究の賜物であり、日本企業におけるFP&Aの今後の可能性を考えるにあたって大変貴重で参考となるものである。

本書を読んで、日本におけるFP&Aの発展に興味を持たれた方は、中央経済社『企業会計』で現在連載中の「日本版FP&Aの夜明け」をあわせて読んでいただくことや、筆者が主導する日本CFO協会におけるFP&A啓蒙活動に参加いただくことをお勧めしたい。

三木 久生(㈱リクルート 事業統括室室長)