落としどころを見つける! "現実的"な人事管理(2021年5月特集)

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特集第1回

5月ももう終わりですね。連休のエナジー貯金、かつかつになってきた頃ではないでしょうか。
仕事に身が入らない、部下の元気がなさそう、職場の雰囲気がギスギスしている......なんてお悩みは、制度を整えると解決するかもしれません。

第1回は、「"現実的"な人事管理」と題して、経営者・人事担当の方はもちろん、指導する立場にある方にも役立つ一冊をご紹介します。理想ばかりではなく現状に歩み寄った解決法、必見です(文責:中央経済社 電子コンテンツ編集支援室)。

ストーリーでわかる!人材マネジメントの課題解決―施策の企画から実行までの最適解を導く

目に見えてわかるようなら時すでに遅しともいえる人事問題。「定番の制度さえ整えておけば大丈夫!」なんて訳にはいかないようです。
『ストーリーでわかる!人材マネジメントの課題解決―施策の企画から実行までの最適解を導く』著者の角直紀氏によれば「組織人材に関わる問題を、ゼロベースで考え、課題を解決する力が問われるようになっている」とのこと。
よその制度をコピペするのではなく、それぞれの会社に合った仕組みを吟味し、導入することが重要になってきています。
本書では、人材マネジメントの現場でよくある失敗を解決まで導く道のりを、9つのケース別に紹介しています。
ストーリーでわかる!人材マネジメントの課題解決―施策の企画から実行までの最適解を導く

目 次

第Ⅰ部 人材フレームに関する課題解決

〔ケース1〕第1章 ベストプラクティスを運用できない会社はダメなのか
〔ケース2〕第2章 揺れる全国転勤の損得勘定
〔ケース3〕第3章 ダイバーシティのお祭りはいつまで続くのか
〔第Ⅰ部のまとめ〕第4章 人材フレームをめぐる日本企業の課題と解決方法

第Ⅱ部 人材マネジメントに関する課題解決

〔ケース4〕第5章 部下を叱れない「いい上司」が会社を弱くする
〔ケース5〕第6章 「やれば報われる」成果主義に賛成しつつも差をつけようとしない矛盾
〔ケース6〕第7章 お仕着せの仕組みだけでは次世代幹部は育たない
〔第Ⅱ部のまとめ〕第8章 人材マネジメントの課題と解決

第Ⅲ部 人事機能に関する課題解決

〔ケース7〕第9章 受けなければならない人が受けていない研修に価値はあるのか
〔ケース8〕第10章 人事部が立ち上がらなければならないと
〔ケース9〕第11章 働き方改革実現に向けたブレークスルーの作りこみ
〔第Ⅲ部のまとめ〕第12章 人事機能をめぐる日本企業の課題と解決方法



本書の特徴

目次でご覧いただいたように、具体的な実例を挙げながらストーリー仕立てで解説が進むので、読み物としても楽しめる一冊です。
複雑に絡み合う社内政治や経営陣と現場との板挟み状況など、あちこちで直面する矛盾や困難。それらの問題を、著者の豊富なコンサルティング経験をいかして解きほぐし、「現実的な落としどころ」を導出するプロセスそのものを提示しているところが、本書の最大の特徴といえます。

「現実的なプロセス」が提案されています第Ⅰ部「人材フレームに関する課題解決」では、日本企業にみられる人材構造・枠組み(=フレーム)の問題点が指摘されています。
効率を追い求め過ぎた結果、骨抜きとなった人事制度......、地域限定総合職制度への社員からの反発......、社会的に求められる「多様化」と企業アイデンティティとのせめぎ合い......などなど、企業が抱える人事制度の問題提起から解決までの道のりが解説されています。

続く第Ⅱ部「人材マネジメントに関する課題解決」では、「管理」に焦点が当てられています。人事管理を現場レベルに任せている組織がぶつかった問題、実効性のある「成果主義」制度を機能させるまでの紆余曲折、次世代幹部社員の育成といった幅広いレベル感でのケースが取り上げられています。
そして、研修制度や人事部の構造、働き方改革をテーマとした第Ⅲ部「人事機能に関する課題解決」。人事機能に迫る変化の波にどう舵をとっていけばよいか、具体例とともに解決方法が提案されています。

マネジメントを「いい上司」に任せない!

まず注目したいのは、第Ⅱ部「人材マネジメントに関する課題解決」の〔ケース4〕「部下を叱れない「いい上司」が会社を弱くする」です。
度重なる部下の間違いを指摘できずに、こっそりカバーしてばかりでは、人材育成にはつながりません。かといって、叱り方を間違えては逆効果......。塩梅が難しいと感じる管理職の方も多いのではないでしょうか。
そこで参考にしたいのが、〔ケース4〕に記載された「人事管理を任せないという現実的な対応」です。
現場に依拠しすぎない人事管理の設計を行い、実行できれば、組織の強化につながるとのこと。本章では、その構造から方法論までが、事例とともに解説されています。

質のよい研修こそ、最大の投資

研修制度に疑問を感じても「何をどう変えればいいのか......」悩みを抱える会社も少なくないのでは。
第Ⅲ部「人事機能に関する課題解決」〔ケース7〕は、「受けなければならない人が受けていない研修に価値はあるのか。」と題して、研修制度の見直しを提案しています。
研修の抜本的見直しに取り組もうとしているG社の、研修体系・研修の位置づけにある問題点を指摘し、見直しまでのプロセスが具体的に描かれています。
目次立てを覗き見してみましょう!

〔ケース7〕第9章 受けなければならない人が受けていない研修に価値はあるのか


 ─投資としての研修の選択と集中
 1.研修の抜本的見直しに取り組もうとしているG社  
 2.G社研修体系の問題構造  
 3.研修を投資と捉えなおす  
 4.G社の研修体系はどう変わったか  
   階層別研修の見直し:若手向けの研修にフォーカスする 
     選択型研修の見直し:評価フィードバックとを結び付ける  
   選抜型研修の見直し:重要なテーマを探索する  
   選抜型研修のテーマの選択とプロジェクト化  
   研修テーマ1:「課長の人材育成力」プロジェクト  
   研修テーマ2:「フィンテックビジネス」プロジェクト 


経営者・人事担当の方はもちろん、指導する立場にある方や、人事コンサルティングのプロの視点を実務に取り入れてみたい方は、ぜひご一読ください。



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