

- 本の紹介
- 法の歴史と法解釈の技法に焦点を当てた法学入門書。西欧法の歴史と日本における継受の軌跡を紐解き、法解釈の技法を学ぶことで、歴史的素養を身につけることを目指す。
目次
第1章 ヨーロッパにおける法発展のいくつかの特徴 西川 洋一
はじめに
1 法律学の勉学はなぜ難しく感じられるのか
2 歴史的存在としての「法」をいかにとらえるか
第1節 ヨーロッパの法の3つの源流:ローマ共和政から初期中世まで
1 古代ローマ法とその展開
2 カトリック教会法の形成
3 非ローマ世界における法の展開
第2節 12世紀における法の構造変化
1 教会改革と法の革新
2 大学と学識法の成立
3 新しい法学普及の歴史的意味
第3節 「ヨーロッパ的な」法・国家構造の発展
1 領域的・属人的妥当原理にもとづく複合的法秩序の形成
2 政治秩序の構造化
第4節 近代への緩やかな歩み
1 政治構造の緩慢な近代化
2 近世法の多層的構造
第2章 近代法学の成立と現代比較法 大西 楠テア
はじめに
第1節 近代私法学の成立
1 フランス民法典の編纂と近代市民法
2 法典論争―歴史法学派の誕生
3 パンデクテン法学
4 ドイツ民法典の制定と利益法学の台頭
第2節 近代公法学の成立と展開
1 ドイツ帝国の成立と公法学方法論の刷新
2 イェリネックと非実証主義国法学
3 ワイマール期からナチス期にかけての国法学
第3節 現代比較法学
1 比較法学の歴史
2 比較法の方法
3 比較法の意義
第4節 ヨーロッパ統合と法
1 ヨーロッパ統合史
2 EU法の基本構造
3 EU法と加盟国法の関係
第5節 グローバル社会の出現と近代法の変容
第3章 西洋法の継受と民法の制定 岡 孝
第1節 出発点
1 不平等条約の問題点
2 1875年(明治8年)太政官布告第103号裁判事務心得第3条
3 江藤新平司法卿のもとでの試み
4 大木喬任司法卿がボアソナードに民法起草を依頼
5 ボアソナードとは
第2節 旧民法の制定過程
1 民法編纂局時代
2 井上馨外相による条約改正交渉
3 条約改正案に対するボアソナードの反対
4 司法省法律取調委員会時代
5 旧民法前半部分の公布
6 旧民法後半部分の編纂
7 旧民法後半部分の公布
第3節 法典論争――旧民法施行延期の流れ
1 民法典論争の発端――法学士会の意見書
2 「民法出でて忠孝滅ぶ」
3 旧民法と明治憲法との関係
4 旧民法の問題点
5 断行派の延期派に対する批判の具体例
6 延期派の勝利
7 延期法案はすぐには法律にはならなかった
第4節 泰西主義に従った明治民法典の編纂
1 欧米列強から要求された泰西主義とは
2 法典調査会の設置と機構改革
3 法典調査の方針―旧民法修正の方針
4 編別構成の変更―パンデクテン方式の採用
5 比較法の所産
6 民法典の公布・施行
第5節 西洋法継受の際の議論
1 土地と建物は一体か別物か
2 未成年養子
3 まとめ――西洋法継受に際しての起草者の主体的な選択
第4章 社会の現実と法 長谷川 貴陽史
はじめに
第1節 末弘厳太郎
1 大正デモクラシー
2 末弘厳太郎
3 末弘厳太郎の法解釈方法論
第2節 川島武宜
1 敗戦と復興―末弘から川島へ
2 川島武宜
3 川島武宜の法解釈方法論
4 川島武宜に対する評価と批判
5 民事訴訟の法意識―川島説に対する批判と擁護
6 その後
第5章 法解釈入門 橋本 陽子
はじめに
第1節 法規範の適用(三段論法)
1 三段論法とは何か
2 規範の発見
3 包摂
4 法律効果
第2節 法解釈の方法―概説―
1 「真の法規範」の発見
2 法解釈の方法
3 法の継続形成
第3節 法解釈の4つの基準(「サヴィニーのカノン」)
1 サヴィニーの見解
2 4つの解釈基準(「カノン」)
3 主観説と客観説
4 ドイツの判例におけるカノンの適用例
5 一般条項の解釈
第4節 様々な解釈方法
1 文言解釈(文理解釈)
2 拡張解釈
3 縮小解釈
4 反対解釈(argumentum e contrario, argumentum e silentio)
5 もちろん解釈(argumentum a fortiori)
6 類推解釈
7 反制定法解釈(contra legem)
第5節 裁判例の検討
1 タトゥー施術は医業か
2 マイニングを行わさせるプログラムと不正指令電磁的記録保管罪
3 中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者
4 労基法の適用が除外される「家事使用人」の意義