法人税における収益認識の研究

岩武 一郎

定価(紙 版):4,620円(税込)

発行日:2021/03/15
A5判 / 188頁
ISBN:978-4-502-37221-6

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本の紹介
わが国法人税は確定決算主義、公正処理基準に特徴づけられるが、法人税の課税所得計算は企業会計を基底とし、影響を受けるので、本書では、収益認識の問題について検討する。

目次



法人税における収益認識の研究
目次

はしがき
初出一覧
第1章 企業会計における2つの利益観の分析
1 収益費用中心観と資産負債中心観の特徴 
 (1) 問題の所在 
 (2) FASB討議資料による説明 
 (3) 資産負債中心観と財産法との違い
2 収益費用中心観と資産負債中心観の相違点 
 (1) 収益認識対象の差異 
 (2) 評価益の取扱い 
 (3) 「取引」の範囲の違い
3 収益費用中心観の収益認識 
 (1)  収益費用中心観におけるアウトプットとインプットの存在 
 (2) 収益認識における決定的事象の抽出 
 (3) 収益費用中心観と取引の法形式 
4 資産負債中心観の収益認識 
 (1) 資産負債中心観におけるストックの変動 
 (2) 資産負債中心観における原初的認識の特徴 
 (3) 資産負債中心観における原初的認識の課題 
 (4) 資産負債中心観における保有資産・負債の再評価 
 (5) 企業会計における経済的実質優先の議論 

第2章 企業会計における利益観の変化と法人税法への影響
1 現行法人税法の収益認識構造 
 (1) 実現主義と権利確定主義 
 (2) 判例における収益認識基準の考え方 
 (3) 利益観の観点からの検討 
 (4) 実現主義と権利確定主義の関係についての検討 
 (5) 現行法人税法の収益認識の特徴 
2 資産負債中心観による収益認識が与える影響 
 (1) 分析の視点 
 (2) 収益認識の範囲に与える影響 
 (3) 取引の法形式と収益認識との関係 
 (4) 租税回避行為と利益観の関係 
 (5) 管理支配基準と利益観の関係 
3 資産負債中心観による収益認識の問題点 
 (1) 資産負債中心観に内在する問題点 
 (2) 未実現利益への課税 

第3章 IFRS15号と法人税法における収益認識の比較
1 はじめに 
2 IFRS15号設定の背景と経緯 
 (1) IFRS15号設定の目的 
 (2) IFRS15号設定の背景 
 (3) IFRS15号設定の経緯 
3 配分アプローチを採用したIFRS15号の概要 
 (1) 収益認識の基本的な考え方 
 (2) 5つのステップによる収益認識 
 (3) 配分アプローチに対する批判 
4 法人税法における収益認識の概要 
 (1) 法人税法の規定の確認 
 (2) 収益認識に関する判例の立場 
 (3) 収益認識の特徴 
5 設例を用いた両者の比較 
6 おわりに 

第4章 IFRS15号の公正処理基準該当性の検討
-主として利益計算構造に着目して-
1 はじめに 
2 利益計算構造の違いによる収益認識の差異 
 (1) 収益費用中心観における収益認識 
 (2) 資産負債中心観における収益認識 
3 IFRS15号における収益認識構造 
 (1) IFRS15号の基本原則について 
 (2) IFRS15号における履行義務の充足について 
4 法人税法における収益認識とIFRS15号との比較 
 (1) 法人税法の規定 
 (2) 法人税法の収益認識に関する判例・課税実務の立場 
 (3) IFRS15号との比較 
5 おわりに 

第5章 対価の前払いがある取引の収益計上時期について
-有料老人ホームの入居一時金の収益計上-
1 はじめに 
2  判例研究:東京高等裁判所平成23年3月30日判決の概要 
 (1) 事実の概要 
 (2) 原告の主張 
 (3) 課税庁の主張 
 (4) 判  旨 
3 判決に対する検討 
 (1) 収益認識の一般的基準の検討 
 (2) 権利確定主義適用にあたっての問題点 
 (3) 終身入居契約・一時入居金の法的性格の検討 
 (4) 公正処理基準による検討 
4 おわりに 

第6章 新株有利発行課税の問題点

-東京高裁平成22年12月15日判決の検討-
1 はじめに 
2 判例研究:東京高裁平成22年12月15日判決 
 (1) 事実の概要 
 (2) 争  点
 (3) X社の主張 
 (4) 判  旨 
3 新株有利発行課税に関する法文上の規定 
4 新株有利発行取引の構造・性質の検討 
 (1) 法人株主間取引の構造 
 (2) 新株有利発行取引の法律関係 
 (3) 新株有利発行取引に伴う経済的成果 
5 判決に対する評価 
6  最高裁平成18年判決(オウブンシャホールディング事件)
   との関係 
 (1) オウブンシャホールディング事件の概要 
 (2) 最高裁平成18年1月24日判決 
 (3) 判決に対する若干の検討 
7 おわりに 

第7章 法人税における過年度損益修正の問題点
-TFK事件とクラヴィス事件の検討を中心に-
1 はじめに
2 過年度損益修正に係る諸規定 
 (1) 国税通則法における過年度損益修正の規定 
 (2) 公正処理基準の解釈による過年度損益修正 
 (3) 上記解釈論の問題点 
3 結論の異なる過年度損益修正に関する2つの裁判例 
 (1) TFK事件(東京高判平成26年4月23日) 
 (2) クラヴィス事件(大阪高判平成30年10月19日) 
 (3) 両判決の比較と問題点 
4 公正処理基準の解釈と前期損益修正 
 (1) 判例における公正処理基準の解釈 
 (2) 前期損益修正の公正処理基準該当性 
 (3) 「取引時にわかりえたか」論の検討 
 (4) 継続企業の公準と前期損益修正 
5 更正の請求制度と過年度損益修正 
 (1) 更正の請求制度の本質 
 (2) 更正の請求の要件 
 (3) 経済的成果の喪失 
6 おわりに 
■文献一覧 
■索  引 



著者プロフィール
《著者紹介》
岩 武 一 郎(いわたけ いちろう)
1964年 福岡県生まれ
1989年 青山学院大学経営学部卒業
2011年 熊本学園大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(経営学博士)
現在,熊本学園大学会計専門職大学院教授,岩武一郎税理士事務所所長
【主な業績】
『税務会計と租税判例』(共著),中央経済社,2019年
『「租税特別措置」の総合分析』(共著),中央経済社,2012年
『基礎簿記入門』(共著),中央経済社,2010年


著者紹介

岩武 一郎(いわたけ いちろう)