『日本企業のタレントマネジメント』(2021年11月特集第1回)

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2021年11月号特集受賞図書特集(2021年4月~10月受賞)

学会、経済関連団体より、2021年4月から10月に表彰された書籍3点をご紹介。担当編集者に書籍の内容や企画背景、受賞した賞について尋ねてみました。読書の秋に、最高水準の"知"の息吹を感じてみませんか。

今回は、経営行動科学学会 第18回(2020年度)経営行動科学学会賞 優秀研究賞(著書)受賞書籍を紹介します。

Q1 本書の内容を教えてください。

まず「タレントマネジメント」という言葉を初めて聞く人やよく知らないという方のために、本書での定義をご紹介します。

「タレントとは、個性に応じた天賦の才能を有しながら努力してその開発を継続する個人であり、在籍する組織の環境に適合し貢献する存在である。タレントマネジメントとは、組織が、その競争戦略をタレント戦略に転換したうえで、適者開発を前提として、タレントを引きつけ、開発し、留め続けることである」(p.82)。

人事管理を取り巻く環境が大きく変化する中で注目されている、タレントマネジメントについて、多様な定義や議論を解きほぐし、企業の実践事例(サトーホールディングス、カゴメ、味の素)を紹介しながら、企業の競争戦略の源泉としての人材について、賃金や報酬面のみに矮小化せずに、いかに育成・開発するかに多くの示唆を与える内容となっています。


Q2 本書を企画したきっかけや背景を教えてください。

今回の賞とは別の学会ですが、日本労務学会という人事労務分野の有力な学会があり、編集部では毎年大会に参加しています。ある年の大会で石山先生が登壇されていました。その時は一聴衆として遠くからお話を聞いていたのですが、その後研究室で面談の機会をいただくことができ、いろいろなお話をさせていただく中で、タレントマネジメントのご研究をされていること、1冊の本にまとめたいとお考えになっていることをうかがいました。
企業の現場で実際に導入されているのに、体系的に解説された本が当時ほとんどなかったことから、テーマの重要性と市場開拓の可能性を同時に感じてぜひ出版をとお願いしてご快諾いただきました。


Q3 経営行動科学学会賞の特徴を教えてください。

経営行動科学学会賞の優秀研究賞は「しっかりとした方法論に基づき理論の構築や仮説検証をしたもの、意義深いインプリケーションの導出やモデルや、新たな方法論の提示をしたもの」と規定されており、適切な方法論による実証研究の質の高さが求められる賞です。


Q4 本書のどのような点が評価されたと思いますか?

日本では初めてタレントマネジメントを学術面から体系的に整理した点、および事例研究などにより日本型人事管理とタレントマネジメントの関係を整理し、研究領域のみならず企業の現場でも実践的に参考になる点を評価いただいたということです。
著者の整理によるオリジナルの図表でわかりやすく解説著者の整理によるオリジナルの図表でわかりやすく解説


Q5 読者へのメッセージをお願いします。

著者の石山先生からメッセージをいただきました!

タレントマネジメントのマネジメントは「管理」というニュアンスよりも、タレントの活躍という難しい取り組みをなんとかやりきる、という意味であると考えます。
つまり、多様な個性を有するタレントの、それぞれの才能を爆発的に開花させる取り組み、とも言えます。このような難しいが意義ある取り組みを現場で検討される際に、本書が少しでも参考になるのなら、望外の喜びです。


以下担当編集者より:
本書は上述の「経営行動科学学会賞」に加えて、「HRアワード2020」(入賞)をW受賞しました。さらに、刊行以来何度も増刷を重ねており、セールスの点でも結果を出し続けている稀有な本です。
信頼性のある高水準な内容と多くの読者の獲得という、同時に実現することが難しいことを見事両立している本です。研究に、実務に、ぜひご一読ください。
紀伊國屋書店大手町店さんでの「HRアワード2020」フェアの棚の前で撮影された石山先生と担当編集者の写真紀伊國屋書店大手町店さんでの「HRアワード2020」フェアの棚の前で