『「会社法」法令集〈第十二版〉』(2021年1月特集)

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2020年12月に、中央経済社の書籍販売サイト「ビジネス専門書オンライン」がリニューアルしました。これを機に、読者の方が本を選ぶ際の参考としていただければ...!との思いをもとに、テーマごとに数点ずつ本を選んで担当編集者のコメントとともにご紹介する特集を掲載していくこととしました。
記念すべき第1回目の特集では、中央経済社の歴史を物語り、現在も読み継がれている本をご紹介します。大学の講義で、資格試験の勉強で、あるいは実務の傍らにと、過去に愛読された方もいらっしゃるのではないでしょうか。担当編集者に本の歴史や編集の秘話を語ってもらいましたので、ぜひご覧ください。
この記事では、『「会社法」法令集〈第十二版〉』(中央経済社編)について取り上げます。


Q1 書籍はいつ頃から発刊されていますか。

 

平成に入りいろいろな法律がカタカナ文語体からひらがな口語体に直されていきましたが、会社法制においても、それまでの商法第2編(会社法)、有限会社法、商法特例法をまとめ、言葉においても実質についても"現代化"することが法制審議会において議論され、平成16年12月に要綱案が公表、次いで、平成17年の通常国会に法案が上程されました。
商法が時代に追いついていないところが目立ち、平成9年以降、「商法改正」として会社法制は何度もさまざまな改正が行われました。当社も他の出版社も商法改正の都度関連書籍を多数出版し、書店ではまるでいつも商法改正フェアを催しているかのような状況がありました。
新しい「会社法」の制定は、学問的、実務的な意義はもちろんのこと、出版ビジネスとしても商法改正の「集大成」として位置づけられ、当社でも編集部の垣根を超えて実に多くの出版を行いました。
『「会社法」法令集』は、その会社法出版ブームの流れの中で生まれたものです。
前置きが長くなりましたが、実は本書はこれまで2回書名を変えて出版されており、そのはじめは『会社法「現代化」法案』というタイトルでした。
成立した法律ではなく"法案"段階でまず出版したのです。その最初の出版の何がすごいかというと、法案が平成17(2005)年3月22日に国会に上程され、本が出来上がったのが4月7日。実に2週間で出版まで漕ぎつけたことです。
会社全体をあげての一大イベントとなりました。
その次の版では、同年6月に国会で成立したことを受けて『会社法(平成17年6月成立)』、さらに次の版で『「会社法」法令集』と改訂改題し、現在まで版を重ねています。


Q2 平易に本の内容をご紹介ください。

 

いわゆる六法のような法令集は分野の異なるいろいろな法律を1冊にまとめるものが通常ですが、本書は会社法という1つのテーマのみを扱う、他にあまり類を見ない法令集といえます。
とはいえ、「会社法」1つだけではなく、「会社法施行令」「会社法施行規則」「会社計算規則」「電子公告規則」「整備法」「整備令」をあわせて収録しています。
本書最大の特徴は、司法書士・金子登志雄氏による"重要条文ミニ解説"で、大事な条文の隣に、その意義や実務上の留意点をきわめて短い文章で解説しており、好評を得ております。
多くの言葉を使って長い文章で説明することよりも、短い文章で端的に表すことは難しいものですが、ミニ解説は無駄を省きつつ要点を押さえた、目からウロコの文章ばかりです。


Q3 現在発行されているものは、初期のものと比較して、時代に応じてどのような変遷を辿ってきましたか。

会社法自体の大改正としては、平成26年と令和元年の2回がありましたが、それ以外にも細かく改正が行われており、さらに省令レベルではもっと改正が頻繁です。
比較的目立つ改正が行われるごとに改訂を行っており、本書の変遷は会社法改正の歴史ともいえます。
最近の版では会社法と法務省令の対応表を掲載していますが、はじめのころ(『会社法「現代化」法案』『会社法(平成17年6月成立)』当時)は、新しい会社法と商法第2編の対応早見表を掲載していたように記憶しています。
その他、会社法の大改正の際には、新旧の法律を並べたり変更される部分に色の網を敷いたりして、何がどう変わる(変わった)のか一目でわかるようにしていることも特徴です。


Q4 この本を「今」どのような人に、あるいはどのような場面で読んでいただきたいですか?

最初の出版当時から今まで読者対象に変わりはなく、会社法に関わるお仕事をされている方のための本ですが、個人的には、ロースクールの学生や各種資格試験で会社法に取り組まざるを得ない方に、ぜひ手に取っていただきたいと思っています。
いきなり会社法の分厚い解説書を読まずとも、ミニ解説でおおよその理解が得られるからです。


Q5 装丁を考える際にイメージされていたことやこだわり等ありますか?

本書の編集者は私で2代目ですが、本書を生み出した編集長が紺、茶、深緑といったシブ目の色で版を重ねてきましたので、その流れを踏襲しています。
読者の方の机の上に置いていただく際に、落ち着きつつも存在感がある、ということをイメージしています。