経営管理システムをデザインする―中小企業における管理会計実践の分析

飛田 努

定価(紙 版):5,060円(税込)

発行日:2021/04/27
A5判 / 348頁
ISBN:978-4-502-38291-8

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本の紹介
経営者は企業目的や目標を実現するためにMCSやその中核の管理会計システムを用いてどのような世界を築こうとしているのか?サーベイ調査・インタビュー調査をもとに解明。

目次

序 章 マネジメント・コントロール・システムのデザイン―情報デザインに関する議論から

第1部 中小企業におけるマネジメント・コントロール・システムの全体的傾向

第1章 マネジメント・コントロール・システムのデザインを考察する対象としての中小企業

第2章 中小企業における経営管理・管理会計実践に関する実態調査―福岡市内・熊本市内の中小企業を調査対象として

第3章 中小企業におけるマネジメント・コントロール・システムの利用に関する実証分析―企業規模と利用状況の関係性を中心に

第4章 中小企業のマネジメント・コントロール・システムと組織成員の動機づけに関する実証研究-熊本県・福岡市内の中小企業を対象として

第2部 中小企業におけるマネジメント・コントロール・システムの個別事例

第5章 中小製造業に見る管理適合的な記録とは―「管理中心主義」からの検討

第6章 小規模製造企業におけるマネジメント・コントロール・システムの設計と運用―アイダメカシステムの事例

第7章 創業者の経験と勘の共有化を図る経営管理システムの構築―聖徳ゼロテックの事例

第8章 老舗中小企業における直接原価計算の導入と実践―藤安醸造における部門別限界利益管理の展開

第9章 組織成員の自律を促すマネジメント・コントロール・システムの設計と運用―ゲイトにおける事業構造の変化に伴う業績管理システムの整備を題材に

第10章 ファミリービジネスにおけるマネジメント・コントロール・システムの整備―企業家精神の発揚と経営管理の公式化:奄美大島開運酒造の事例をもとに

第11章 中小製造業における戦略管理会計とブランド・マネジメント―筑水キャニコムの事例

第12章 中小企業におけるマネジメント・コントロール・システムの整備と組織成員による受容―管理会計と目標管理の連携:本山合金製作所の事例

第13章 中小製造企業におけるマネジメント・コントロール・システムの移転と定着―東海合金製作所における経営改革を題材に

第14章 マネジメント・コントロール・システムが従業員の動機づけに与える影響に関する実証分析―本山合金製作所・東海合金製作所における事例



終 章 研究のまとめと今後の課題―中小企業・小規模企業の管理会計実践に見えるシステム設計のポイント

著者紹介

飛田 努(とびた つとむ)
[プロフィール]
福岡大学商学部 准教授
神奈川県出身,立命館大学大学院博士課程後期課程修了〔博士(経営学)〕。九州東海大学,東海大学熊本キャンパス,熊本学園大学を経て現職。現在,日本経営会計専門家研究学会 常務理事,日本会計教育学会 理事,日本中小企業学会 幹事。
ゼミナールでは実践的教育を行い,学園祭の模擬店を擬似的起業に見立て,設立,商品開発,マーケティング,生産管理,財務諸表作成,監査,会社解散の一連のプロセスを学ぶ「創業体験プログラム」や,「社会課題をビジネスで解決する」ことをテーマに地域や企業との連携を通じた学習機会を創出している。

[主な著作]
『農業発展に向けた簿記の役割』共著、中央経済社、2014年
『次世代管理会計の礎石』共著、中央経済社、2015年
『異文化対応の会計課題』共著、同文舘出版、2019年 他

担当編集者コメント
〇本書の趣旨
経営管理システム(Management Control System;MCS)を設計する経営者は、何を考え、どのような理由で管理技法を選択しているのか?
そして、MCSを通じて経営者の意図をどのように組織成員に浸透させ、組織目的や目標を実現しようとしているのか?
経営者はMCSやその中核である管理会計システムを用いてどのような世界を築こうとしているのであろうか?

本書は、企業内に存在する「思考と現実のズレ」「組織階層間にある認識ギャップ」を調整することを目的として利用されるMCSの構造を明らかにするために、「デザイン」をキーワードとして中小企業における管理会計実践を臨床的に観察しています。

中小企業の管理会計は、その多様性や閉鎖性から、なかなか研究成果がでていなかった分野ですね。
飛田先生も相当苦労されたと思いますが、持ち前フットワークとその一方での慎重な検討によりようやくまとめた研究成果です。
中小企業の管理会計についての単著は私の記憶ではほとんどなく、貴重な成果を世に問うものになったと思います。

経営の現場で日々奮闘されている経営者、そしてそれをサポートする職業会計人(税理士・公認会計士)に重要な示唆を提示している研究書です。

*1 本書は、牧誠財団研究叢書14(旧メルコ学術振興財団研究叢書)として刊行したものです。

*2 本書は、2021年日本財務管理学会・学会賞(著書の部)を受賞しました!