闘う公認会計士―アメリカにおける150年の軌跡

千代田 邦夫

定価(紙 版):4,180円(税込)

発行日:2014/03/27
A5判 / 312頁
ISBN:978-4-502-09050-9

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本の紹介
日本の公認会計士監査制度の範となったアメリカにおいて、公認会計士がどのように発展を遂げたか、150年の歴史を学ぶことにより、日本のあるべき姿を探る研究書。

目次


闘う公認会計士
─アメリカにおける150年の軌跡
目次

第1章 会計士の存在を認識させるための闘い
     ─会計開拓者の時代

 1 プロローグ─ 英国の会計士事情
 2 会計開拓者とアメリカ公共会計士協会
 3 スコットランドやイングランドの会計士の渡来
 4 鉄道会社の会計監査
 5 企業合同運動と会計士の活躍
 6 公認会計士法
 7 ニューヨーク州公認会計士協会と世界会計士会議

第2章 “professional accountant”への闘い
 1 株主宛年次報告書の財務諸表に対する監査
 2 革新主義運動と会計士,そして州法による銀行監査
 3 第1次世界大戦と会計士
 4 “パブリック・セクター”の介入とAIAの「自主規制」
 5 経営者のための監査と監査証明書額縁説
 6 限定付監査証明書
 7 会計職業の拡張と業界への批判

第3章 SECの「権威」との闘い
 1 株式恐慌前
 2 株式恐慌とニューヨーク証券取引所,そしてアメリカ会計士協会
 3 法定監査の開始─証券法と証券取引所法そしてSEC
 4 証券法と証券取引所法の影響
 5 会計原則設定主体は誰か?
 6 SECの基本方針

第4章 会計原則設定への闘い(1)
     ─会計手続委員会の「奮闘」と「内部告発」

 1 会計手続委員会
 2 会計士業界の「内部告発」
 3 会計職業の拡大

第5章 会計原則設定への闘い(2)─APBの「苦悩」と「健闘」
 1 APB
 2 “インベストメント・クレジット”会計基準
 3 会計原則の「統一性」対「柔軟性」
 4 APBへの猛烈な批判
 5 APBの勝利─インカム・タックス・アロケーション
 6 経済界の抵抗等

第6章 会計原則設定への闘い(3)
     ─APBの「失敗」と会計産業の「繁栄」

 1 企業結合会計基準
 2 APBの崩壊と公認会計士業界の苦悩
 3 会計士業界は「大繁盛」

第7章 訴訟の脅威との闘い─監査人の責任の拡大
 1 大企業の倒産と訴訟の増加
 2 訴訟の影響

第8章 「ウォール・ストリート署」との闘い
 1 攻めるSEC
 2 財務報告の改善と監査人の関与
 3 SECによる監査人に対する処分
 4 「反逆児」アーサー・アンダーセンの抵抗
 5 企業腐敗と公認会計士に対する批判

第9章 国家権力との闘い─嵐の中の公認会計士業界
 1 「戦闘」開始
 2 モス報告書
 3 メトカーフ報告書と公聴会そしてSEC
 4 ピア・レビュー
 5 石油・天然ガス会計基準「闘争」
 6 ビッグ8の拡大

第10章 “エクスペクテーション・ギャップ”との闘い,
      大手会計事務所間の闘い,そして再び訴訟との闘い

 1 “エクスペクテーション・ギャップ”
 2 新監査基準書
 3 大手会計事務所間の闘い─大型合併とその影響
 4 再び訴訟との闘い

第11章 投資者の“パーセプション”との闘い
      ─監査人の独立性とMAS

 1 問題の所在─ 1970年代中頃までの動き
 2 SECの「攻勢」と「後退」
 3 MASの拡大
 4 SECとAICPAの「攻防」
 5 大手会計事務所の対処と独立性への継続的要求

第12章 監査部門とMAS部門との闘い
      ─アーサー・アンダーセンはなぜ崩壊したのか?

 1 ビッグ8の最下位からトップへ
 2 A.E. アンダーセンの信念と事務所の発展
 3 事務所の大躍進─コンサルティング業務の拡大
 4 監査部門とコンサルティング部門の決定的対立
 5 アンダーセンの悪夢と「会計産業」の覇者
 6 アンダーセン解体への道
 7 アーサー・アンンダーセン崩壊の真の原因は何か

第13章 「経営者不正を発見せよ」との闘い
 1 財務諸表監査の目的とは?
 2 1970年前半までの見解
 3 コーエン委員会中間報告書(1977年)
 4 SAS No.16(1977年)
 5 監査リスク・アプローチ
 6 SAS No.53(1988年)
 7 SAS No.82(1997年)
 8 SAS No.99(2002年)と国際監査基準及び日本の監査基準への
   影響

第14章 懐疑心との闘い─自意識の改革
 1 「権威」ある勧告
 2 監査基準書における展開
 3 職業的懐疑心は浸透したのか?
 4 「我々の良心です」

第15章 PCAOBからのプレッシャーとの闘い
 1 サーベンス・オクスレー法
 2 公開会社会計監督委員会(PCAOB)
 3 PCAOBの活動(2003年~2007年)
 4 PCAOBの活動(2008年~2012年)

 おわりに─ アメリカ150年の歴史から何を学ぶのか?
  1 闘わずしては何も得られない
  2 “プロフェッショナリズム”を堅持すること
  3 SECの存在意義─“パブリックセクター”の役割とは?

 索 引


著者プロフィール 千代田 邦夫(ちよだ くにお)
1966年 早稲田大学第一商学部卒業
1968年 早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了
1968年〜1976年 鹿児島経済大学助手,講師,助教授
1976年〜1984年 立命館大学経営学部助教授
1984年〜2006年 立命館大学経営学部教授
2006年〜2009年 立命館大学大学院経営管理研究科教授
2009年〜2012年 熊本学園大学大学院会計専門職研究科教授
2012年〜2013年 早稲田大学大学院会計研究科教授
2013年〜現在 公認会計士・監査審査会会長
早稲田大学大学院客員教授
経営学博士,公認会計士
1973年〜1974年 チュレイン大学大学院留学
1981年〜1982年 ライス大学客員研究員
1992年〜1993年 アメリカン大学客員研究員
1998年〜2000年 公認会計士試験第2次試験委員
2003年〜2006年 公認会計士試験第3次試験委員
日経・経済図書文化賞
日本会計研究学会太田賞
日本内部監査協会青木賞
日本公認会計士協会学術賞
辻 真会計賞

〈主要著書〉
中国版:『日本会计』李敏校閲・李文忠訳,上海財経大学出版社,2006年
単 著:『新版会計学入門−会計・監査の基礎を学ぶ』(第3版),中央経済社,2014年
『監査役に何ができるか?』(第2版),中央経済社,2013年
『現代会計監査論』(全面改訂版),税務経理協会,2009年
『会計学入門−会計・税務・監査の基礎を学ぶ』(第9版),中央経済社,2008年
『貸借対照表監査研究』中央経済社,2008年
『課長の会計道』中央経済社,2004年
『監査論の基礎』税務経理協会,1998年
『アメリカ監査論−マルチディメンショナル・アプローチとリスク・アプローチ』中央経済社,1994年
『公認会計士−あるプロフェッショナル100年の闘い』文理閣,1987年
『アメリカ監査制度発達史』中央経済社,1984年
共 著:『会計監査と企業統治』千代田邦夫・鳥羽至英編著,中央経済社,2011年
『公認会計士試験制度』日本監査研究学会編,第一法規,1993年
『新監査基準・準則』日本監査研究学会編,第一法規,1992年
『監査法人』日本監査研究学会編,第一法規,1990年
共 訳:『ウォーレスの監査論−自由市場と規制市場における監査の経済的役割』千代田邦夫・盛田良久・百合野正博・朴 大栄・伊豫田隆俊,同文舘出版,1991年






















著者紹介

千代田 邦夫(ちよだ くにお)
[プロフィール]
1966年 早稲田大学第一商学部卒業
1968年 早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了
1968年 鹿児島経済大学助手,講師,助教授(~1976年)
1976年 立命館大学経営学部助教授(~1984年)
1984年 立命館大学経営学部教授(~2006年)
2006年 立命館大学大学院経営管理研究科教授(~2009年)
2009年 熊本学園大学大学院会計専門職研究科教授(~2012年)
2012年 早稲田大学大学院会計研究科教授(~2014年)
2013年 公認会計士・監査審査会会長(~2016年)
現 在 立命館大学大学院経営管理研究科客員教授
    立命館アジア太平洋大学(APU)客員教授
    MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社監査役
    寺崎電気産業株式会社取締役監査等委員
    星和電機株式会社取締役監査等委員
    経営学博士・公認会計士

[主な著作]
単著
『新版会計学入門―会計・監査の基礎を学ぶ』(第8版),中央経済社,2024年
『経営者はどこに行ってしまったのか―東芝 今に続く混迷』中央経済社,2022年
『現場力がUPする課長の会計強化書』中央経済社,2019年
『財務ディスクロージャーと会計士監査の進化』中央経済社,2018年
『闘う公認会計士―アメリカにおける150年の軌跡』中央経済社,2014年
『監査役に何ができるか?』(第2版),中央経済社,2013年
『現代会計監査論』(全面改訂版),税務経理協会,2009年
『会計学入門―会計・税務・監査の基礎を学ぶ』(第9版),中央経済社,2008年
『貸借対照表監査研究』中央経済社,2008年
『日本会计』李敏校閲・李文忠訳,上海財経大学出版社,2006年
『課長の会計道』中央経済社,2004年
『監査論の基礎』税務経理協会,1998年
『アメリカ監査論―マルチディメンショナル・アプローチとリスク・アプローチ』中央経済社,1994年(日経・経済図書文化賞,日本会計研究学会太田賞,日本内部監査協会青木賞)
『公認会計士―あるプロフェッショナル100年の闘い』文理閣,1987年
『アメリカ監査制度発達史』中央経済社,1984年(日本公認会計士協会学術賞)
共編著
『体系現代会計学第7巻 会計監査と企業統治』中央経済社,2011年
共訳
『ウォーレスの監査論―自由市場と規制市場における監査の経済的役割』同文舘出版,1991年

担当編集者コメント
現在、公認会計士・監査審査会会長であり、また日本の監査論研究の第一人者である著者の渾身作です。

まず、「はじめに」にある以下のメッセージをご覧ください。

「わが国の公認会計士監査制度は着実に発展しています。海外で活躍する公認会計士も増えています。
しかし、公認会計士監査制度の発展は、監査人の「独立性」と「監査の品質」について投資者がいかに理解しているかによって判定されるべきであると考えるとき、わが国の公認会計士監査制度はなお多くの問題を抱えています。そして、公認会計士を取り巻く環境が激変し、魅力ある公認会計士像が描きづらい今日、業界は混迷を深めているとさえいえるでしょう。
本書は、わが国の公認会計士制度の範となったアメリカにおいて、公認会計士が、職域を開拓し会計プロフェッショナルとして認められるために、いかに闘ってきたかを描いています。
グローバル市場におけるわが国の公認会計士監査制度はいかにあるべきかを論じるとき、アメリカ公認会計士150年の歴史は大いに参考になると信じます。」

本書は、アメリカにおける公認会計士に関する150年の闘いの歴史を描いた研究書であり、啓蒙書です。

1章から読み進めるのももちろんよいのですが、現代までの150年の歴史ですので、まずは12章以降の現代的な問題をとり上げているところからお読みいただくと、よいかもしれません。

業界が混迷する昨今、「公認会計士とはいったい何なのか?公認会計士はいかにあるべきか?」を考える上でさまざまなヒントが盛り込まれており、すべての公認会計士、試験合格者、受験生に読んでいただきたい書籍です。