管理会計の再構築―本質的機能とメゾ管理会計への展開

高橋 賢

定価(紙 版):4,620円(税込)

発行日:2019/09/25
A5判 / 256頁
ISBN:978-4-502-32181-8

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本の紹介
管理会計における過去(キャパシティコスト)・現在(財管一致)・未来(メゾ管理会計の構想)の諸問題を検討して、さらに来るべき人口減少社会でのあるべき姿を探る研究書。

目次



管理会計の再構築 
-本質的機能とメゾ管理会計への展開
目次

序章 本書のねらいと構成
 1 本書のねらい
 2 本書の構成

第Ⅰ部 管理会計の基本課題:キャパシティ・コストの問題
第1章 キャパシティ・コストの連結性:
     技術的連結原価と経済的連結原価
 1 はじめに
 2 鉄道業における『連結』概念を巡る論争
 3 原価計算上における連結原価の定義
 4 概念の拡張と用語の代替
 5 連結性の概念と連結原価,共通費
 6 第1章の結語
第2章 影響アプローチのメカニズム:原価配賦と正義
 1 はじめに
 2 原価配賦
 3 原価配賦と正義
 4 管理会計情報における影響アプローチ
 5 第2章の結語
第3章 キャパシティの意思決定とアイドル・キャパシティの発生
 1 はじめに
 2 意思決定のパターンとアイドル・キャパシティの発生
 3 アイドル・キャパシティの測定と分類
 4 キャパシティ・クッションとしての未利用キャパシティの利用
 5 第3章の結語
第4章 アイドル・キャパシティの会計的測定と活用
 1 はじめに
 2 アイドル・キャパシティの補足と会計
 3 アイドル・キャパシティの活用 ~トヨタ自動車の発想
 4 第4章の結語

第Ⅱ部 情報システムとしての管理会計:財管一致の会計
第5章 簿記による記録と管理会計:簿記の管理会計機能
 1 はじめに
 2 記録行為の結果による管理と記録行為そのものによる管理
 3 複式簿記の経営管理機能
 4 管理会計情報と複式簿記
 5 内部活動の描写と工業簿記
 6 企業規模と管理会計としての簿記の役割
 7 第5章の結語
第6章 財管一致の会計
 1 はじめに
 2 企業における財務会計と管理会計
 3 財管一致の本質
 4 財管一致へのアプローチ
 5 第6章の結語
第7章 管理会計システムとしての直接原価計算の再評価
 1 はじめに
 2 2000年代における直接原価計算の再評価
 3 資金管理と直接原価計算:直接原価計算の新たな可能性
 4 第7章の結語
第8章 直接原価計算と財務会計:財管一致と直接原価計算
 1 はじめに
 2 瀬音駅計算としての直接原価計算
 3 管理会計と財務会計の連携と直接原価計算
 4 環境変化の利益計算への影響
 5 制度計算との整合性
6 第8章の結語
 
第Ⅲ部 管理会計対象の拡大:
     ミクロ管理会計からメゾの管理会計へ

第9章 メゾ管理会計の構想:地域的サプライチェーンのマネジメント
 1 はじめに
 2 メゾという領域
 3 メゾの現象・対象としての産業クラスター
 4 産業クラスターの課題と管理会計の必要性
 5 管理会計の対象そしての産業クラスター
 6 第9章の結語
第10章 メゾレベルのBSC:サプライチェーン・マネジメントとBSC
 1 はじめに
 2 産業クラスターの特質とBSC適用上の問題
 3 サプライチェーンとBSC
 4 サプライチェーンBSCの特徴と類型
 5 サプライチェーンBSCの産業クラスターへの応用
 6 第10章の結語
第11章 産業クラスターと 戦略カスケードマップ
 1 はじめに
 2 戦略マップト産業クラスター
 3 戦略マップのカスケード
 4 産業クラスターと戦略カスケードマップ
 5 第11章の結語
第12章 メゾ管理会計におけるイノベーション促進:協働の窓とBSC
 1 はじめに
 2 戦略的協働
 3 協働の窓モデル
 4 協働の窓モデルの産業クラスター分析への援用
 5 窓の解放ツール・シナリオとしてのBSC
 6 第12章の結語
終章 新たな管理会計の構築を目指して
 1 はじめに
 2 ネットワークによる集積とキャパシティの有効活用
 3 財管一致と地域的サプライチェーンの効果測定
 4 本書の結び:2020年代以降の管理会計



著者プロフィール
高橋 賢(たかはし まさる)
横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授 博士
(商学,一橋大学)


著者紹介

高橋 賢(たかはし まさる)

担当編集者コメント
横浜国立大学・高橋賢先生の前著『直接原価計算論発達史-米国における史的展開と現代的意義』(2008年)刊行後に進展した研究の成果です。
本書は,管理会計において古くから議論されている課題,現代的課題,そして未来に向けた課題の中で,特に解決すべきであると考えている課題を検討しています。

<本書の構成>
序 章 本書のねらいと構成
第Ⅰ部 管理会計の基本課題:キャパシティ・コストの問題
第1章 キャパシティ・コストの連結性:技術的連結原価と経済的連結原価
第2章 影響アプローチのメカニズム:原価配賦と正義
第3章 キャパシティの意思決定とアイドル・キャパシティの発生
第4章 アイドル・キャパシティの会計的測定と活用
第Ⅱ部 情報システムとしての管理会計:財管一致の会計
第5章 簿記による記録と管理会計:簿記の管理会計機能
第6章 財管一致の会計
第7章 管理会計システムとしての直接原価計算の再評価
第8章 直接原価計算と財務会計:財管一致と直接原価計算
第Ⅲ部 管理会計対象の拡大:ミクロの管理会計からメゾの管理会計へ
第9章 メゾ管理会計の構想:地域的サプライチェーンのマネジメント
第10章 メゾレベルのBSC:サプライチェーン・マネジメントとBSC
第11章 産業クラスターと戦略カスケードマップ
第12章 メゾ管理会計におけるイノベーション促進:協働の窓とBSC

終 章 新たな管理会計の構築を目指して

「第Ⅰ部 管理会計の基本問題:キャパシティ・コストの問題」では,古くから議論されている課題として,組織がキャパシティを持つことから生じるコストについて焦点を当てています。いわゆるキャパシティ・コストであり、産業革命以降,業績管理会計上も意思決定会計上もさまざまな問題を企業に突きつけてきました。この問題は,過去から現代にまで至る古くて新しい問題であり、未来においても問題となるでしょう。
このテーマとアプローチの研究は,成果がなかなか出にくいことから,近年取り組む研究者が少ない中,まだまだ格闘すべき論点が多くあることを示しており,高橋先生ならではの研究成果だと思います。

「第Ⅱ部 情報システムとしての管理会計:財管一致の会計」では,現代における課題の1つである,会計のあり方,会計の存在意義について検討しています。長らく,企業会計の世界では,財務会計と管理会計という2つの領域が存在していますが、その間には断絶に近い高い壁ができていました。しかしながら,会計環境の変化により,2つの領域が断絶したままでは,企業にとっての会計の存在意義が薄まってしまう可能性があります。そこで,本書では財務会計と管理会計が一致した状態の「財管一致の問題」について取り上げています。
いわゆる大家と言われる年配の先生とお話していると,専門分野以外の勉強もしっかりされている方が多いように感じます。特に第Ⅱ部は,高橋先生が簿記や財務会計についての基礎がしっかり身についておられるからこそ書けた内容だと思っています。
第Ⅱ部の内容は、簿記、財務会計の研究者にも必読です。

「第Ⅲ部 管理会計対象の拡大:ミクロの管理会計からメゾの管理会計へ」は,未来に向けた課題として,ネットワーク型の組織に関する管理会計の構築を取り上げています。 近年の市場のグローバル化の進展につれ,競争上一企業・一組織では対応できない局面が現れてきています。企業グループの枠を超えた連携や国が政策的にバックアップする状況も生まれてきており,産業クラスターのような集積もその1つです。これは,会計による管理の対象が一企業(ミクロ)の範囲から,地域(メゾ)の領域にまで拡がることを意味しています。
第Ⅲ部は,会計検査院特別研究官のご経験や編著『地域再生のための経営と会計-産業クラスターの可能性』等での研究をベースに,管理会計の可能性を示唆しています。

そして,最後に終章でこれらの検討を受けて,管理会計の再構築を提示しています。
ここで書かれている人口減少社会における管理会計の有用性の指摘は,会計の世界のみならず,経済社会全体にかかわるもので,真剣に取り組むべき課題と思われます。

なお,「はしがき」に「管理会計の研究をはじめて30年、やればやるほど管理会計というものがわからなくなってきた」とのコメントが記されています。
これだけの研究成果をあげられているにもかかわらずのこのコメントは,研究の世界の奥深さを示す大変含蓄のあるものと感じました。

本書は,管理会計の研究者,実務家のみならず,簿記・財務会計の研究者,実務家、さらには地域創成に取り組む方々等にも大きな意義のある研究書です。
ぜひぜひご覧ください!

なお、前著『直接原価計算論発達史-米国における史的展開と現代的意義』もご覧いただいていない方は、ぜひご覧ください。
https://www.biz-book.jp/%E7%9B%B4%E6%8E%A5%E5%8E%9F%E4%BE%A1%E8%A8%88%E7%AE%97%E8%AB%96%E7%99%BA%E9%81%94%E5%8F%B2%E2%80%95%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8F%B2%E7%9A%84%E5%B1%95%E9%96%8B%E3%81%A8%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E7%9A%84%E6%84%8F%E7%BE%A9/isbn/978-4-502-28040-5


◆著者紹介(刊行時)
高橋 賢(たかはし まさる)
横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授 博士(商学,一橋大学)
1968年生まれ(長崎県諫早市出身)。1991年一橋大学商学部卒業、1996年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位修得退学。同年千葉大学法経学部講師、1998年同助教授、2000年横浜国立大学経営学部助教授、2004年ポワチエ大学外国人招聘助教授、2011年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授を経て2013年より現職。現在、日本原価計算研究学会常任理事を務める。2005年日本簿記学会学会賞受賞(泉宏之氏,原俊雄氏と共同受賞)。会計検査院特別研究官(2013-2015年)を歴任。
<主要著書>
『直接原価計算論発達史―米国における史的展開と現代的意義』中央経済社,2008年
『テキスト原価会計』中央経済社、第1版:2009年、第2版:2015年
『管理会計の変革』共編著、中央経済社,2013年
『地域再生のための経営と会計-産業クラスターの可能性』共編著、中央経済社、2014年
『テキスト会計学講義』共編著、中央経済社、2018年
他多数