税理士の未来―新たなプロフェッショナルの条件

坂本 孝司

定価(紙 版):3,080円(税込)

発行日:2019/06/28
A5判 / 304頁
ISBN:978-4-502-31661-6

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本の紹介
本書では、税理士の業務を税務・会計・保証・経営助言の4つに整理して、それぞれに理論的かつ実務的に解説するとともに、未来に向けて成長を続けるための必要条件を明示。

著者紹介

坂本 孝司(さかもと たかし)

担当編集者コメント
1.本書はどのようにして生まれたか?(注:あくまでも私の視点です)
私が新卒で入社して1年後、雑誌『税務弘報』編集部に配属された当初、税理士のイメージは単に「税法の規定に従って淡々と申告書を作る人」でした(先生方、本当にゴメンナサイ)。
編集部に配属されてしばらくたった頃に出会った書籍が、『税理士の職務と責任』松沢智(当時:日本大学教授・弁護士)著、中央経済社。
当時松沢先生に連載をしていただいており、毎月原稿をいただきにお伺いしていたので、先生の書かれたものを少しでも見ておこうということが手に取ったきっかけでした。
そして、本書で「税理士=税法に関する法律家」と規定し、その意義を理論的に解明されているのをみて、税理士はプロフェッショナルとして社会で大きな役割を果たしていることをはじめて認識し、また大きな感銘を受け、その後の誌面作りにも大きなヒントが得られたことを今でもよく覚えています。

その後、武田隆二先生、河﨑照行先生、そして坂本先生と中小企業会計に関する書籍を手がける中で、「税理士=税法の法律家」だけではなくその果たすべき役割も少しずつ変化してきているように感じていました。
そのような中、2014年に千代田邦夫先生(当時:公認会計士・監査審査会会長)に『闘う公認会計士-アメリカにおける150年の軌跡』を刊行しました。この書籍は、公認会計士が現在のポジションを得るためどのような苦闘をしてきたか150年の歴史を振り返り、現在現役で従事されている方々への理論的な支柱を提供するものです。
この書籍を手がけた際、「税理士」についても過去と現在の状況を踏まえながら、税理士の「未来のあるべき姿」を理論的かつ実務的に明らかにし、その目標に導く明確な道筋を示すことはできないか、そしてそれを示せるのは坂本先生しかいないと思い、お願いして実現したのが、本書です。

2.本書のエッセンス
本書の目次は、以下のとおり。
<目次>
第1章 税理士の職務
第2章 税務業務
第3章 会計業務
第4章 保証業務
第5章 経営助言業務
第6章 4大業務展開の基礎-会計帳簿・巡回監査・システム
第7章 変化する時代への対応-中小企業金融における税理士の役割

本書では、税理士の業務を以下の「4大業務」として位置づけて、それぞれについて詳細に解説しています。
◆税務の領域について「税法に関する法律家」
◆会計の領域について「会計専門家」
◆保証の領域について「税務監査人・会計参与」
◆経営の領域について「経営コンサルタント」
さらに、4大業務の基礎となる適切な記帳・巡回監査・システムや、変化する時代への対応として中小企業金融における税理士の果たすべき役割にも言及しました。

そして、税理士業務の他の専門業にないきわだった特質として、以下を明らかにしました。
➊同一企業に対して、4大業務を同時に提供できること、インテリジェンス・バンクとしての機能を果たすことができること
❷企業・個人のガバナンス強化に貢献できること

「未来」を語る際、怪しげな内容や誤った情報を根拠に書かれたものも少なくありません。
しかし、本書の内容は、坂本先生の『会計制度の解明-ドイツとの比較による日本のグランドデザイン』中央経済社、2011年、『ドイツにおける中小企業金融と税理士の役割』中央経済社、2012年、『中小企業金融における会計の役割』共編著、中央経済社、2017年等の研究や実務の集大成ともいえるもので、しっかりとした理論的根拠にもとづき、未来を提示していることが大きな特徴です。

3.主な読者対象
本書は、以下の方々にぜひ読んでいただきたいと考えています。

❶すべての税理士・公認会計士および会計事務所職員
皆さんが日頃従事されている仕事の意義を再認識していただき、業務に邁進していただくことで、社会から真に信頼され、なくてはならない職業として不動の地位を築いていただければと思います。

❷税理士・公認会計士受験生、将来の職業を模索する学生等
税理士の仕事は本書が示すように社会に大きな意義のある仕事であることを理解した上で、勉強に取り組んでいただき、1日も早くプロフェッショナルの仲間入りをしていただきたいと思います。

❸大学教員、専門学校講師の方々
税理士の真の意義や役割を十分に理解いただき、学生の方々にその素晴らしさをぜひ教えていただければと思います。

❹会計事務所の主要なクライアント先である中小企業の経営者
本書で示すように、税理士は4大業務を同時提供して、経営をサポートしてくれる強い味方です。ぜひ最も身近な相談相手として今以上に関係性を深めていただければと思います(もちろん、4大業務を十分に提供できる税理士等であることが大前提ではありますが)。

❺税理士とともに中小企業をサポートする金融機関職員
4大業務を十分に提供できる税理士と共同で中小企業をサポートすれば、ご自身の業務を効率化できるとともに、現在提供している業務以上のハイレベルのサービスを提供できるようになると思います。

❻税務行政に携わる公務員
4大業務を十分に提供できる税理士が増えることにより、税務行政の効率化が図れると思います。

4.最後に
近年のAIの進展により税理士・公認会計士・会計事務所等の仕事が激減するのではないかとの悲観的な見解もあり、業界内には閉塞感を感じている方も多いと思われます。
また、そのような状況も影響してか税理士試験の受験者数も減少の一途をたどっています。
しかし、本書で示した「税理士のあるべき姿」を実践していけば、AIにより淘汰されることは決してありません。むしろ、AIをも活用して、さらに高度なサービスを提供し、社会に貢献することができるのです!

なお、今日のように税理士の先生方の手がける仕事も多様化する中、本書の内容については、さまざまなご意見もあることと思っています。
坂本先生もその点は、十分認識された上で、本書の内容をたたき台に、今後も「税理士の職務とは何か」を追求していこうとお考えではないかと思います。
こうした困難な時代・状況の中でも、未来に向けて明確なビジョンを示せる坂本先生に、組織や業界のリーダーのあるべき姿をみた思いです。

本書を一人でも多くの方にお読みいただき、そして心の起爆剤にしていただければ、これほどうれしいことはありません。
ぜひぜひご覧ください!