森田哲彌学説の研究―一橋会計学の展開

安藤 英義 編著
新田 忠誓 編著
定価:5,500円(税込)

発行日:2020/05/27
A5判 / 308頁
ISBN:978-4-502-34161-8

送料について
本の紹介
昭和から平成にかけて活躍された会計学の巨星・森田哲彌先生(一橋大学)の学説の全体像を一橋会計学の伝統との関わりから解明し、さらに森田学説を起点に現代的課題を探究。

目次



森田哲彌学説の研究
―一橋会計学の展開
目次

緒言
第1章 森田学説と一橋会計学
1 はじめに
2 主な森田論文と期別分類
3 第1期:期間利益の性質と計算方法
4 第2期:費用収益対応の原則
5 第3期:価格変動会計論
  ―貨幣資本の拘束性と自由選択資金性 …他

第2章 森田簿記理論と簿記の原理および国際会計基準
     (資産負債アプローチ)
1 はじめにー問題の提起
2 森田先生の複式記録の論理
3 日々の簿記実践(日記帳簿記)と森田先生の簿記理論
  ―複式簿記数値決定の論理
4 おわりにー財表簿記と資産負債アプローチ
[補論]森田先生の複式簿記と資産負債アプローチの関係づけに
ついて

第3章 森田学説における貨幣資本の拘束性概念
1 森田学説と価格変動会計
2 原価主義会計における利益計算の解釈
3 森田教授の価格変動会計論構想
4 貨幣資本の拘束性概念における三つの局面
5 森田学説における貨幣資本の拘束性概念
  ―対立概念のアウフヘーベンとしての拘束性概念

第4章 連結会計基準の発展と森田学説
1 はじめに
2 連結財務諸表制度の導入
3 1975年連結財務諸表原則の特徴
4 1975年連結財務諸表原則の問題点路と実務への影響
5 その後の会計基準の改訂動向 …他

第5章 森田学説における原価主義会計
1 はじめに
2 資本維持概念の視点から観た原価主義会計
3 収益認識の観点から観た原価主義会計
4 森田学説における原価主義会計の捉え方の今日的意義
5 おわりに

第6章 森田学説における貨幣資本概念と簿記
1 はじめに
2 貨幣の本質
3 資本主義経済と企業
4 森田学説における利益概念・資本概念
5 森田学説における複式簿記記録の役割
6 おわりに

第7章 混合測定属性モデルの論理と課題
1 はじめに
2 IASB「測定プロジェクトの変遷
3 Nissim and Penmanの所説―「裁定取引の経済学」
4 森田学説―資産負債観と収益費用観の二元的構造
5 おわりに

第8章 会計理論構築の方法―森田学説とヴァッター学説
1 はじめに
2 IASB[2018]の問題点
  ―「目的」を頂点とする概念フレームワークの限界
3 森田学説(森田[1979])の概要
4 ヴァッター学説(Vatter[1947/1978])の概要
5 森田学説とヴァッター学説の統合
6 おわりに

第9章 棚卸資産の評価損と戻入れ
1 はじめに
2 各国制度における低価法適用時の時価
3 森田[1986]における二つの時価の検討
4 評価損の戻入れ
5 おわりに

第10章 連結財務諸表の利用者と連結資本
―米国および国際会計基準における少数株主持分の取扱いに関する
  変遷を踏まえて
1 はじめに―本章の目的
2 米国における少数株主持分の取扱いに関する変遷
3 国際会計基準における少数株主持分の取扱いに関する変遷
4 連結財務諸表の利用者と連結資本

第11章 公会計における会計アプローチと複式簿記
1 はじめに―本章の目的
2 「研究会報告書」および「マニュアル」公表の経緯
3 「統一的な基準」における会計アプローチと財務書評の構成要素
4 公会計の資産・負債アプローチにおける会計計算
5 「統一的な基準」における複式簿記の性格と位置づけ
6 おわりに―公会計における資産・負債アプローチ

第12章 ニックリッシュ勘定理論の再解釈
1 はじめに―問題意識
2 損益法と財産法の複式簿記観
3 貸借対照表等式に基づく勘定理論
4 ニックリッシュの4計算
5 おわりに―四つの計算を踏まえた勘定理論

第13章 森田学説における尺度性利益の研究
1 はじめに―問題の所在
2 森田学説における利益の尺度性とその計算方法
3 IAS第1号に基づく財務諸表の表示が抱える問題
4 おわりに―収益費用アプローチの必要性

第14章 実現主義と新収益認識基準―森田学説に依拠して
1 はじめに
2 分配静態論における実現主義
3 森田学説における実現主義
4 実現主義と新収益認識基準
5 おわりに

第15章 動的貸借対照表論における利益計算原則の構造
  ―森田学説への影響を中心に

1 はじめに
2 動的貸借対照表論における利益計算原則
3 利益計算原則の性格
4 動態論における利益計算原則の構造
5 おわりに―森田学説とシュマーレンバッハ学説

森田哲彌先生経歴・著作目録

結言


著者プロフィール
<編著者紹介>
安藤 英義(あんどう ひでよし)
1943年生まれ
一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位修得
[現在]一橋大学名誉教授,専修大学名誉教授,商学博士

新田 忠誓(にった ただちか)
1944年生まれ
一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位修得
[現在]一橋大学名誉教授,商学博士


著者紹介

安藤 英義(あんどう ひでよし)
1943年生まれ
一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位修得退学
専修大学商学部教授・一橋大学名誉教授
商学博士

[主な著書]
『商法会計制度論』(国元書房,1985年/新版,白桃書房,1997年)
『会計フレームワークと会計基準』(編著,中央経済社,1996年)
『簿記会計の研究』(中央経済社,2001年)
『会計学論考』(編著,中央経済社,2007年)
『会計学大辞典(第五版)』(共編著,中央経済社,2007年)
『企業会計と法制度』(共編著,中央経済社,2011年)他

新田 忠誓(にった ただちか)
1944年生まれ
一橋大学大学院商学研究科博士課程単位修得退学
帝京大学経済学部教授・一橋大学名誉教授
商学博士

[主な著書]
『動的貸借対照表の原理と展開』(白桃書房,1995年)
『財務諸表論究-動的貸借対照表論の応用(第2版)』(中央経済社,1999年)
『会計学・簿記入門』第11版(白桃書房,2012年)
『企業会計の計算構造』(共編著,中央経済社,2012年)他

[主要論文]
「行為の会計学と形態の会計」『企業会計』第64巻第5号(2012年)他

担当編集者コメント
〇本書の趣旨
明治期に始まる一橋会計学は、大正から戦前の昭和にかけて大きく開花し、その勢いは戦後の昭和から平成へと続きました。この流れの中で、昭和30年代から活躍されたのが森田哲彌先生です。先生は平成26年6月8日に84歳で亡くなられ、令和2年のご命日で七回忌を迎えます。本書は、これを記念に計画されたもので、先生の弟子筋(直弟子及び孫弟子)による森田学説の研究論文集です。
本書の総論といえる第1章では、森田学説の全体像と成立過程、さらに一橋会計学の系譜との係わりを明らかにしています。各論冒頭の第2章では、森田簿記理論と資産負債アプローチとの緊張した関係を明らかにしています。続く各章でも、森田学説を手がかりとして、既存の会計理論、概念フレームワークや会計基準における諸問題に挑んでいます。
これにより、森田先生が簿記・財務会計の領域において広範にかつ深度ある業績を残され、そして森田学説が会計学研究において時間を超えた活性を有することがご理解いただけるでしょう。
会計の本質を理解するための必読書です。



ここからわかるように、本書は森田門下による単なる記念論文集ではありません。

森田学説の全体像と本質がわかるだけでなく、
①すべての論文が森田学説を基点にしており、森田学説が現代的課題にも展開できるほどに時間をこえた優れた理論であることを明らかにしていること
②森田学説と日本の会計学界をリードしてきた一橋会計学の系譜(管理会計も含む)との関わりをしめすことで、一橋会計学の系譜をも示していること
という大きな意義を有する研究書です。

本書の目次は、以下の通り。

〇Contents
緒 言 (安藤英義)
第1章 森田学説と一橋会計学(安藤英義)
第2章 森田簿記理論と簿記の原理および国際会計基準(資産負債アプローチ)(新田忠誓)
第3章 森田学説における貨幣資本の拘束性概念(壹岐芳弘)
第4章 連結会計基準の発展と森田学説(小宮山賢)
第5章 森田学説における原価主義会計(齋藤真哉)
第6章 森田学説における貨幣資本概念と簿記(関根慎吾)
第7章 混合測定属性モデルの論理と課題(角ヶ谷典幸) 
第8章 会計理論構築の方法―森田学説とヴァッター学説(村田英治)
第9章 棚卸資産の評価損と戻入れ(原 俊雄)
第10章 連結財務諸表の利用者と連結資本―米国及び国際会計基準における少数株主持分の取扱いに関する変遷を踏まえて(神納樹史)
第11章 公会計における会計アプローチと複式簿記(吉田智也) 
第12章 ニックリッシュ勘定理論の再解釈(西舘 司)
第13章 森田学説における尺度性利益の研究(松下真也)
第14章 実現主義と新収益認識基準―森田学説に依拠して(金子善行)
第15章 動的貸借対照表論における利益計算原則の構造-森田学説への影響を中心に(佐々木隆志)

森田哲彌先生経歴・著作目録
結 言 (新田忠誓)

安藤・新田両先生の本書への想いがよく表れているのが、新田先生が執筆された結言の最後の部分になりますので、以下引用します。

「先生の主著は『価格変動会計論』(国元書房、昭和54年)である。ここでは、物価変動会計を扱ったドイツの研究者の学説が素材となっている。研究分野でいうと、学説研究、さらに、ドイツが対象である。当時の一橋では、このような研究が主流であり、大学院の授業では、古典を講読・輪読しながら、会計とは何かを議論したものである。会計学者になるための修行であり、会計哲学習得作業であった。昨今の大学院の教育研究環境、僅か5年で博士の学位取得つまりは即効の成果を求められている状況の下では、考えられないものとなったろう。
先生の業績目録からも明らかなように、先生は、学説研究を通じた会計の見方そして論理を基に、現実の会計現象を分析し意味づけておられる。つまり、単なる学説研究ではない。学説研究という息の長い仕事は、会計の本質理解に迫る一里塚に過ぎないと言える。現に会計学研究に携わっている学徒さらには新たに会計学研究を目指そうとしている学徒に、本書が、即効性はないが学者として息の長い研究の在り方を示したものとなれれば幸いと、本書を閉じるにあたり感じている。」

私の記憶が確かであれば、『黒澤会計学研究』合崎堅二監修、森山書店、2002年以来の会計の書籍で人に焦点を当てた研究書になると思います(日本語の書籍ではたぶん)。

学問の伝統や一門のつながりなどが希薄になってきている昨今、あらためてよいものだなぁと感じられる書籍ですね。

すべての会計研究者、大学院生の方々、さらに会計学に関心のある方々にご覧いただきたい書籍。

ぜひぜひご覧ください!