ビジネス・実用

中小企業買収の法務―事業承継型M&A・ベンチャー企業M&A

定価:3,740円(税込) 送料について

発行日:2018-09-04
A5判/300頁
ISBN:978-4-502-27611-8

紹介文

中小企業買収を事業承継型M&Aとベンチャー企業M&Aに分け、法務上の問題を解説。事例を通じて、対象企業の内部管理体制や予算的制約等をふまえた生きた実務が理解できる。

評価

1件の評価があります。

中小企業買収の法務 松中 学(名古屋大学大学院准教授)さんのコメント (2018/10/11)
【旬刊経理情報2018年10月20日号書評より】
本書では、上場企業同士のM&Аではなく、中小企業の事業承継M&А、ベンチャー企業との資本提携とM&Аに焦点を当てて、スキームや生じやすい法的問題などを解説している。
筆者の経験に基づいた設例を踏まえて、あり得る問題が指摘された後、解決方法を示している。解決方法の部分では、一般的な「相場」を示すだけでなく、どのあたりから「正解」のない悩ましい問題となるのかを明示し、対処の方針を解説する。こうした構成と後述する内容から、早く次を読みたくなる魅力を持った本である。
中小企業の紛争では、株主名簿は幽霊がさまよい、会議が議事録のなかにしか存在せず、役員は実は権利義務者ばかりといった事実関係も少なくない。
本書前半を読むと、事業承継M&Аは、過去の経営や人間関係の総決算を迫るとともに、積み上がった法的問題にも向き合わざるを得ないものであると気づかされる。これらの問題は、M&Аを迎えて顕在化するだけであり、本書の内容はM&Аにまだ直面していない中小企業にも有益である。
また、会社法を専門とする者として見逃せないのは、事業承継M&Аにおける問題は、遵守を期待できない会社法の規定─すでに改正されたものも含む─がもたらした軋轢の総決算でもあるという側面である。発起人の数のように後で政策が変わった問題のみならず、株式譲渡に株券の交付を求めるというそれ自体当然と思えるルールであっても(本書コラム3参照)、規制のコストは意外なところにかかる。
本書は、事業承継M&Аと比べると、ベンチャー企業との資本業務提携・M&Аでは、過去の法令不遵守は問題になりにくく、資本構成も計画的であることを示す。興味深いことに、むしろ買手(本書では買手として伝統的な大手事業会社を念頭に置いている)をめぐる記述が増える。買手側の社内の意思決定、交渉態度、取引後の扱いなどにディールの障害が潜んでいることが浮かび上がるのである。買手側にないもの、買手側が弱いものを得るために出資やM&Аを行う以上、買手側の事情にも焦点が当たるのは自然である。
自らにないものを求めているにもかかわらず、買手がそれまでの行動様式を維持しようとするのはやや滑稽でもあるが、さまざまな体制が整備された洗練された当事者の陥りかねない陥穽という点で興味深い。
ベンチャー企業への出資に際して何を求めているのか(最も欲しいものは本当にシナジーか、人材か、投資利益かなど)が買手の組織のなかで明確になっていない、統一されていないこともあるのかもしれない。
以上のように、中小規模の会社のM&Аに関わる法律家はもちろん、当事者や研究者といったさまざまな立場にとって有益な、そして「刺さる」内容が盛り込まれた一冊である。
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