しっかりわかるファイナンス

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目次

第1部 ファイナンスと企業価値
 第1章 キャッシュフローの価値
  金利と現在価値
   お金の時間価値,明日のお金より今日のお金
   将来価値は現在価値に金利が加わる
   将来価値を割り引いて現在価値を求める
   債券価格は債券のキャッシュフローの現在価値である
   金利が上昇すると債券価格は下がる
   利付債は複数の割引債を束ねたもの
   長期債は価格変動が大きい
   債券のIRR を利回りという

  リスクとリターン
   宝くじの期待リターンはリスクに見合わない
   投資家はリスクプレミアムを求める
   ばらつきの大きさでリスクプレミアムが決まる
   資本市場の投資家はリスク回避的である
   割引率は無リスク金利にリスクプレミアムを加える

    補論 デュレーションと変動利付債

 第2章 投資の意思決定
   正味現在価値がプラスの投資をする
   永久年金の現在価値は1回の年金額を割引率で割る
   IRR がハードル・レートを超える投資をする
   IRR の高さだけでなく投資予算に見合った規模も必要
   複数のIRR が計算されることがある
   回収期間法は投資判断の簡便法である
   埋没費用や機会費用をチェックする

    補論 IRR のみで判断できないケース

 第3章 企業の資本コスト
  レバレッジと加重平均資本コスト(WACC)
   負債にはレバレッジ効果がある
   負債には法人税の節税効果がある
   WACC は節税効果を資本コストで調整している
   WACC は目標とする資本負債構成で計算する

  負債のコスト
   負債コストには信用リスクが反映される
   格付けは社債などの信用リスクを評価したもの

  株主資本のコスト
   過去の市場データから株主資本コストを推計する
   市場リスクプレミアムは国債を上回る株式市場のリターン
   ベータが大きい株式は資本コストが高い
   ポートフォリオと動きが違う株式のベータは小さい
   景気の影響を受けにくい製薬会社などのベータは小さい
   CAPM はポートフォリオ理論に基づく価格決定理論

    補論1 レバレッジ効果
    補論2 財務レバレッジとベータ
    補論3 修正現在価値(adjusted-present value:APV)法
    補論4 WACC 法,APV 法,FCFE 法の比較

 第4章 企業価値評価
   企業価値は継続価値と清算価値のいずれか大きいほう
   余剰資産は現在の価値で評価する
   最初に法人税を差し引いた税引き後営業利益を求める
   設備投資をキャッシュフロー・ベースにする
   運転資本投資額は運転資本の増加分
   将来予測にはパーセント・トゥー・セールス法が有用
   ターミナル・バリューには永久年金の公式が便利
   企業価値は事業価値と余剰資産価値の合計
   実務ではPER など投資尺度による評価も参考にする
   投資尺度は簡便法の限界をよく理解することが必要

 第5章 現代ポートフォリオ理論とCAPM
  現代ポートフォリオ理論(MPT)
   パッシブはMPT から生まれた投資手法
   MPT は平均・分散アプローチと呼ばれる
   効率的ポートフォリオは同リターンでリスクが一番小さい
   資本市場線が効率的ポートフォリオを示す

  資本資産評価モデル(CAPM)
   CAPM はポートフォリオへの貢献度で価格付け
   市場ポートフォリオ追加時の影響を等しくする価格付け
   証券市場線はベータと期待リターンの関係を表す
   資本市場線の傾きをリスクの市場価格という
   裁定価格理論は複数ファクターへの感度で株価を説明

  資本市場の効率性
   情報への対応が速い効率的市場では株価は予想できない
   市場の効率性は一般に3つの段階に区別される
   行動ファイナンスはアノマリーを投資家心理で説明する
   アナリストなどの競争で市場の効率性が維持される
   オルタナティブ投資は伝統的な金融商品以外への投資

    補論1 ポートフォリオによるリスクの軽減
    補論2 合成ポートフォリオの曲線の傾き
    補論3 裁定価格理論における裁定取引

 第6章 財務政策
  資本負債構成
   法人税がないMM 理論では資本構成は企業価値に無関係
   法人税があるMM 理論では負債比率100%が最適
   MM の前提は資本構成が事業キャッシュフローを変えない
   財務的困窮は事業のキャッシュフローを減少させる
   負債比率が高いと過少投資の問題が生じうる
   負債比率が高いと株主にギャンブルの誘惑が生じる
   負債投資家の信頼を得るためにはコストがかかる
   節税効果は財務的困窮コストとトレードオフの関係
   企業と投資家のレバレッジは代替可能ではない
   経営者は株式発行を避けるために財務上の余裕を求める
   ペッキング・オーダー理論は増資回避をシグナリングで説明
   資本構成の目標は業界平均などから求める

  配当と自社株買い
   MM 理論の自家製配当は配当相当額の株式売却
   MM の配当理論では企業は無配当がよい
   配当は収益見通しのシグナリング効果を持つ
   自社株買いには株価割安のシグナリング効果がある
   自社株買い実施の理由はひとつではない

  コーポレート・ガバナンス
   経営者は私的情報を持っている
   株主と経営者の関係は不完備契約である
   コレクティブ・アクションには誰も真剣に取り組まない
   監視されない代理人にはモラル・ハザードが生じる
   よいインセンティブは代理人の利益を依頼人と一致させる
   代理人利用で生じるコストをエージェンシー・コストという
   株主が監視しない経営者にはモラル・ハザードが生じる
   フリー・キャッシュフロー理論は借金による規律を主張

    補論 節税効果の割引率をめぐる議論

第2部 現代の金融資本市場
 第7章 先渡契約,スワップ,証券化
  為替の先渡契約(為替予約)
   先渡契約は等価な資産を将来交換する契約
   金利が高い通貨の先物レートは安くなる
   為替予約は為替変動リスクをヘッジする
   為替予約は資金取引で複製できる
   裁定取引が先物レートと現物レートのひずみを解消する

  金利の先渡契約
   右上がりのイールド・カーブを順イールドという
   前後のスポット・レートからフォワード・レートが求まる
   借入と貸出でフォワード・レートを裁定できる
   流動性選好仮説は右上がりのイールド・カーブを説明する

  スワップ取引と証券化商品
   スポット・レートから利付債のクーポンが決まる
   金利スワップは固定金利と変動金利を交換する
   CDS はスワップの仕組みで信用リスクを取引する
   証券化はキャッシュフローを変えた金融商品をつくり出す

 第8章 先物取引
   先物取引は取引所を介して先渡取引と同じ取引をする
   先物は売り手と買い手のゼロサム・ゲームである
   取引所は双方の契約相手になるので価格リスクを負わない
   証拠金と日々の値洗いが決済できない取引の発生を防ぐ
   先物市場の価格発見機能は投機家の活発な取引による
   先物取引は取引商品や決済日などが標準化されている
   日経平均は金利が配当を上回るので先物のほうが高い
   金融商品は先物と現物の裁定が働きやすい
   ベーシス・リスクはヘッジの効果を薄める

 第9章 オプション
  オプションの基本
   オプションの買い手は権利,売り手は義務のみ持つ
   オプションの買い手は利益が出るときだけ行使する
   オプションの売り手は行使がないと利益を得る
   内在価値に加えて満期までの時間価値がある
   原資産価格に対してオプション価格は曲線になる
   原資産と安全資産で複製をつくりオプション価格を求める
   デルタ値がオプションの複製やヘッジのベース
   原資産のボラティリティが大きいとオプション価値が高い
   ヨーロピアンの評価にはプット・コール・パリティが使える
   オプションで先物や原資産が合成できる
   投機的取引では予想に基づいた合成ポジションをつくる
   新株予約権は企業が発行するコール・オプションである
   転換社債はコール・オプションとセットにした社債である

  リスク中立評価法
   リスク中立確率を使ってオプション価格を求める
   ブラック・ショールズはヨーロピアンの価格方程式
   プットの価値は上限があるので行使期間などの影響が複雑

  多期間の2項モデルとリアル・オプション
   原資産に配当がないアメリカン・コールは期限前行使されない
   多期間2項モデルは将来から後退計算する
   アメリカンの評価は内在価値と比べながら後退計算する
   経営上のオプションをリアル・オプションという
   リアル・オプションも2項モデルで評価できる

    補論 リスク中立確率と複製ポートフォリオ

   さらに学びたい人のための参考図書

   本文中で言及した論文等

  索引
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著者プロフィール
渡辺茂(わたなべ・しげる)
1976年東京大学卒業
1986年ハーバード大学MBA
現在 立教大学経済学部教授専門はコーポレート・ファイナンス
野村総合研究所企業財務調査室長,スタンフォード大学フーバー研究所客員フェローなどを経て2003年4月から現職。
大蔵省企業会計審議会,金融庁金融審議会,通商産業省産業構造審議会企業法制分科会委員,公認会計士試験出題委員などを歴任。

著書:
『ROE[株主資本利益率]革命』東洋経済新報社1994年
『資本市場とコーポレート・ファイナンス』中央経済社1999年(共著)
Japanese Management in the Low Growth Era, Springer 1999年(共著)
『ケースと図解で学ぶ企業価値評価』日本経済新聞社2003年(編著)
『企業価値評価の基本』日経文庫ビジュアル日本経済新聞社2005年