危険とリスクの会計―アメリカ会計基準の設定過程を通じた理論研究

久保 淳司

定価(紙 版):9,900円(税込)

発行日:2020/08/28
A5判 / 640頁
ISBN:978-4-502-33561-7

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本の紹介
企業活動の諸リスクに関する情報を財務諸表に計上し得る根拠について、基準自体のみならず、 設定に至る会議議事録、公開草案、コメントレター等の膨大な資料をもとに解明。

目次

プロローグ



第Ⅰ部 SFAS5と蓋然性要件

序 章 第Ⅰ部の目的、課題、対象および構成

第1章 SFAS5以前の偶発事象会計基準

第2章 将来事象プロジェクトの開始とディスカッションメモランダム

第3章 公開草案とSFAS5

第4章 SFAS5における蓋然性要件

第5章 SFAS5における当初測定値と爾後測定

終 章 第Ⅰ部の要約と結論



第Ⅱ部 SFAS143と期待現在価値計算

序 章 第Ⅱ部の目的、課題、対象および構成

第6章 資産除去プロジェクト-適用範囲および適用対象を中心とした検討-

第7章 SFAS143における当初認識

第8章 SFAS143における当初測定

第9章 SFAS143における借方相手勘定と爾後測定

第10章 資産負債の両建表示の意味

第11章 条件付資産除去債務の認識および未確定債務の測定

終 章 第Ⅱ部の要約と結論



第Ⅲ部 SFAS146と債務性要件

序 章 第Ⅲ部の目的、課題、対象および構成

第12章 リストラクチャリング会計基準前史

第13章 減損関連プロジェクト

第14章 債務生成と負債認識-リース契約終了支出と受給権未獲得従業員解雇給付-

終 章 第Ⅲ部の要約と結論



第Ⅳ部 ソレイユ型とリュンヌ型

序 章 第Ⅳ部の目的、課題および構成

第15章 因果関係を基礎にした2つの会計処理モデル-必要的因果関係と寄与的因果関係-

第16章 2つの負債の本質観-一事象観最終犠牲説と一事象観派生犠牲説-

第17章 ソレイユ型とリュンヌ型の並存の理由

終 章 第Ⅳ部の要約と結論



エピローグ



補 章 SFAS143およびSFAS146公表後の動向―FASB概念フレームワークプロジェクト―


著者紹介

久保 淳司(くぼ じゅんじ)
[プロフィール]
1972年11月 札幌市生まれ
1995年3月 北海道大学経済学部卒業
1997年3月 小樽商科大学大学院商学研究科修士課程修了
2000年3月 北海道大学大学院経済学研究科博士後期課程修了 博士(経営学)
2000年4月 北海道大学大学院経済学研究科講師
2002年4月 北海道大学大学院経済学研究科助教授 職名および組織名称の変更を経て,
2020年4月 北海道大学大学院経済学研究院教授(現在に至る)

[主な著作]
『1株当り利益会計基準の研究』同文舘出版,2007年
『連結財務諸表ハンドブック Ⅱ』共訳,2004年,税務経理協会

担当編集者コメント
◆本書の趣旨
現行の会計基準には企業活動の諸リスクに対する会計処理として、蓋然性を要件とする旧くからの方法と、負債の公正価値を基礎にする新しい方法の2つがありますが、いずれの方法についても財務諸表に企業活動の諸リスクを計上し得る根拠は必ずしも明らかではありません。
本書では、旧くからの会計基準(SFAS5、FIN14、SFAS112、SOP96-1)と「新しい」会計基準(SFAS143、SFAS146、FIN47)について、会計基準自体の内容だけでなく、それぞれの設定に至る正規の手続き(due process)における会議議事録、公開草案、公開草案に対するコメントレターなどの資料もあわせて検討しています。これらの検討結果を紡ぎ上げて、2つの方法のそれぞれが企業活動の諸リスクを財務諸表に計上し得る根拠を解明することが本書の目的です。
 
◆なぜアメリカ会計基準を検討するのか?
あえて-わが国の会計基準やIFRSではなく-アメリカ会計基準を題材とする理由は、1930年代から連綿と続く歴史にあります。
アメリカ会計基準はピースミールアプローチによって設定されるため、アメリカ会計基準の現在の体系はゼロベースで設計された最善形ではなく、その時代時代の影響の下で継ぎ接ぎされたブリコラージュである。逆説的であるが、継ぎ接ぎされたものであるが故に、そこに通底する黙示の本質の解明が可能です。
そして、黙示の本質の解明という狙いの実現のために、本書では、会計基準自体の内容の分析よりも、各会計基準の設定過程の追体験に重点を置いた検討を行っています。



本書は、トータル640頁。
その背後では、上記のように、膨大な会議議事録、公開草案、公開草案に対するコメントレター、公聴会あるいは円卓討論会の資料を検討対象にしており、久保先生の苦闘がうかがわれます。
そして、本書を通じた結論もオリジナリティがありますね。

近年、こうした研究スタイルは、時間がかかり、また一部では科学的でないなどの理由から敬遠されがちですが、ここまで徹底して調べ上げて、本質を探究されているのは、素晴らしいご研究の成果だと思います。

ぜひぜひご覧ください!