- 本の紹介
- 「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ作る」ジャスト・イン・タイムの考え方と会計システムの関係を時間軸を組み込んで考察。キャッシュフローに回帰する管理会計の必要性を提言。
目次
トヨタ 原点回帰の管理会計
目次
まえがき
プロローグ
1 本書の性格と視点
2 問題認識
3 TPS導入の「会計フリーアプローチ」と「会計リンクアプローチ」
4 本書の構成
5 財務会計とどう向き合うか
第1章 そもそもトヨタ生産方式(TPS)とは何か
1 TPSの定義
1 トヨタの基本理念
2 トヨタ・ウェイ2001
2 TPSの仕組みの基礎
1 TPSの基本構造
2 タクトタイム―顧客の要求するスピードに合わせて,
「流れ」を作る ……ほか
3 TPSの哲学的要素(Thoughtware)
1 現地現物
2 「見える化」(Visualize)
4 非TPSモードとTPSモード―DNAの違いを俯瞰する
1 海の水と河の水
2 「海の水」の諸相と対応策
5 非データ・場面情報のコンセプト
―全体最適経営システム再設計に向けて
1 非データ・場面情報のコンセプト
2 5回のなぜ
研究問題
第2章 管理会計の基礎とものづくり経営
―特にJITとの関係をめぐって
1 管理会計の定義
2 管理会計の基礎的手法
1 会計公準と複式簿記記帳の流れ
2 複式簿記の流れと財務三表―現金主義と発生主義
3 貸借対照表を考える
1 「貸借対照表はフローである」―TPSも「流れ」である
2 貸借対照表中心のマネジメント実践例
4 TPS志向の財務分析の可能性
1 「デュポンチャート」をめぐって
2 ROI指標の問題は何か――TPS,JITの視点から
5 原価管理とTPS
1 製造原価報告書
―「原価差額」と「アワー・レート(製造間接費配賦率)」
2 会計がTPS(特にJIT)を阻害する現象の再確認 ……ほか
研究課題
第3章 管理会計の工夫
1 ものづくり経営システムのアーキテクチャー
―ピリオドからプロダクトへ
1 経営計画の立て方―プロダクトライフサイクル視点で
2 製品生涯採算管理とライフサイクル・ポジション
―時間軸の組み込み ……ほか
2 JITと整合する会計指標
1 問題の背景―TPSは財務会計とどう向き合うべきか
2 リードタイム短縮の経済効果の測定法
3「利益」から「利益ポテンシャル」へ
1 利益ポテンシャル算式―ROAの工場版
2 PP指標の読み方
3 平均リードタイム(lead time average)の測定
4 事例紹介―自動車業界7社のPP比較より
5 PP値を向上させる「正攻法」
第4章 全部原価計算とTPS
1 企業環境の変化と原価計算
1 原価計算の目的
2 全部原価計算の構造的問題点とその現れ方
1 原価の分類
2 全部原価計算の構造的問題点 ……ほか
3 全部原価計算の限界を克服する歩み
1 直接原価計算は何を克服し,何を問題として残しているか
2 活動基準原価計算は,製品原価の歪みを正し,
適切な原価管理を行えるか ……ほか
4 生産と会計の正しい関係性の構築がTPSを支援する
練習問題/110
第5章 投下資本コスト―原価概念に時間軸を
1 時間軸を組み込んだ投下資本コストの考え方
1 貨幣の時間価値
2 資本コストの本質 ……ほか
2 ケースA―財務会計の限界
ケースA:財務会計の限界─プロジェクトの採算計算
3 ケースB─リードタイムのコスト削減効果
ケースB:リードタイムのコスト削減効果
4 ケースC─JITと輸送・在庫問題
ケースC:JITと輸送・在庫問題?
ケースD:JITと輸送・在庫問題?
―投下資本コストをわかりやすく説明する寸劇
5 ケースE─国内生産か海外生産か
ケースE:国内生産か,海外生産か
6 経済的付加価値EVAの意義と問題点─結びに代えて
練習問題
設問1 二度仕込み八丁味噌
設問2 日本車の納期 ……ほか
練習問題解答
補 論
1 CAPM(資本資産価格モデル)について
2 積上げ方式の投下資本コスト
第6章 Jコスト論と改善活動
1 現場改善(トヨタ方式)の実際と直面する壁
1 トヨタ方式の構成
2 トヨタ方式の土台にある哲学のキーワード ……ほか
2 Jコスト論とは何か
1 収益性評価法の問題点
2 利回りをベースに評価法を考える ……ほか
3 Jコスト論の応用例
1 Jコスト論から見た棚卸資産とは
2 資金コストの罠 ……ほか
4 Jコスト論の実践事例
1 B社の調査結果のJコスト図
2 Jコスト図を見やすくする ……ほか
5 財務会計からのJIT評価
1 財務会計論でリードタイムを評価
2 収益性分析図の使用例
第7章 内部統制ルールとTPS
1 発生主義会計と利益の「ゆがみ」
1 報告利益の分布の「ゆがみ」
2 発生主義会計と利益 ……ほか
2 問題の所在─「在庫が増えると報告利益が増える?」
1 在庫評価と固定間接費
2 在庫操作と報告利益 ……ほか
3 利益とキャッシュ・フローの差─発生項目
1 発生項目
2 裁 量 性
4 利益の期間平準化
1 発生項目による利益の期間平準化
2 在庫による利益の期間平準化 ……ほか
5 自動車産業の在庫回転期間
1 サンプルとデータ
2 在庫回転期間の特徴
6 分析テーブル
7 裁量的発生項目による利益の期間平準化の検出
1 概 観
2 裁量的発生項目による保守的決算 ……ほか
8 在庫による利益の期間平準化の検出
1 概 観
2 在庫の回転期間─グループ比較と構成要素比較 ……ほか
9 内部統制ルールとトヨタ生産システム─むすびに代えて
1 内部統制システムの監査
2 トップ・ダウン型のリスク・アプローチとTPS ……ほか
研究課題
解答例
第8章 原価企画とTPS
1 原価企画とは
1 原価企画の歴史
2 原価の企画 ……ほか
2 原価企画の経営上の意義
3 原価企画とTPS
1 製品開発活動におけるTPSの適用
2 原価管理から見た原価企画とTPSの関係 ……ほか
4 本章のまとめとこれからの原価企画
1 まとめ
2 これからの原価企画
索 引
著者プロフィール
〈編著者紹介〉
河田 信(かわだ まこと)
1942年 中国北京に生まれる。
1964年 慶應義塾大学法学部政治学科卒業。株式会社明電舎入社
1972年 帝人製機株式会社入社。システム部長,企画部長,開発推進部長等を歴任
現 在 名城大学経営学部教授 経済学博士(東北大学)
〈主要著書等〉
“Strategic Management Accounting-Why and How,”Management Accounting,August, 1993, IMA.(1993-94,Certificate Appreciation受賞)(共同論文)
『米国製造業の復活―Relevance Regained』(辻厚生共訳),中央経済社,1994年
『プロダクト管理会計―生産システムと会計の新しい枠組み』中央経済社,1996年
「製品価値評価とナレッジマネジメント」名城論叢,2001年3月
『トヨタはなぜ強いのか―自然生命システム経営の真髄』(訳書)日本経済新聞社,2002年(Johnson, H. T. and Bro¨ms, A., Profit Beyond Measure, The Free Press, 2000)
『トヨタシステムと管理会計―全体最適経営システムの再構築をめざして』中央経済社,2004年
「会計はプル型生産システムを支援できるか?」『組織科学』Vol. 40,No.4 白桃書房:40-50,2007.6月