国際財務報告基準規定の探究―金融負債をめぐる議論に基づく考察

安井 一浩

定価(紙 版):4,620円(税込)

発行日:2015/10/09
A5判 / 284頁
ISBN:978-4-502-16801-7

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本の紹介
IFRS金融負債規定に関する討議資料・公開草案に対する膨大なコメントレターを詳細に分析して、IFRSの設定に際し不完全な根拠に基づき議論がなされていることを解明。

目次


国際財務報告基準規定の探究
─金融負債をめぐる議論に基づく考察
目次

序 章 仮説の提示と本書の概要
 第1節 問題意識の発端
 第2節 仮説の提示
 第3節 本書の目的と構成

第1章 会計基準の規定の根拠
 第1節 本章の概要
 第2節 論理に関する考察
  1 論理の定義と推論規則
  2 構文論・意味論・語用論
  3 構文論の利点と問題点
  4 意味論および語用論の問題点
  5 意味論におけるトートロジー
  6 論理と数学
 第3節 前提に関する考察
  1 前提の定義と範囲
  2 定義としての前提
  3 環境,範囲および原則的な考え方としての前提
  4 前提の明示と追加
  5 前提の検証可能性
  6 前提と会計公準
 第4節 前提と論理の分離
 第5節 実証に関する考察
  1 実証の範囲
  2 実証の限界
  3 実証の必要性
 第6節 論理と理論
  1 理論の定義
  2 会計基準と理論
 第7節 根拠の分類

第2章 IFRSにおける金融負債の公正価値測定に関する議論
 第1節 本章の概要
 第2節 IFRSと日本基準との相違
 第3節 IAS/IFRSの金融負債規定の変遷
 第4節 IAS/IFRSの金融負債規定の背景に関する資料
  1 IAS/IFRSの結論の背景
  2 公表資料
 第5節 金融負債に関する論点
 第6節 IFRSフレームワークと金融負債の公正価値測定
  1 IFRSフレームワークの変遷
  2 フレームワーク(1989)と金融負債の公正価値測定
  3 フレームワーク(2010)と金融負債の公正価値測定
  4 フレームワークに関する討議資料および公開草案と
    金融負債の公正価値測定

第3章 討議資料に対するコメント・レターの定量的分析
 第1節 本章の概要
 第2節 分析対象
  1 討議資料(2009)の内容
  2 コメント・レター
 第3節 回答の集計分析方法
  1 回答対象の分類
  2 回答分類の方法
  3 散布度の算出
 第4節 集計結果および散布度の算定
  1 質問1に対する回答
  2 質問2に対する回答
  3 質問3に対する回答
  4 質問4に対する回答
 第5節 本章での検討結果

第4章 公開草案に対するコメント・レターの定量的分析
 第1節 本章の概要
 第2節 分析対象
  1 公開草案(2010)の内容
  2 コメント・レター
 第3節 回答の集計分析方法
  1 回答分類の方法
  2 連関係数の算出
 第4節 回答の集計結果
  1 質問1および質問2に対する回答
  2 質問3に対する回答
  3 質問4および質問5に対する回答
  4 質問6に対する回答
  5 質問7に対する回答
  6 質問8に対する回答
  7 質問9に対する回答
  8 質問10に対する回答

 第5節 各質問に対する回答間の連関係数の算出
  1 連関係数の算出
  2 集計結果

第5章 討議資料に対する会計基準設定組織の見解と根拠
 第1節 本章の概要
 第2節 分析対象および分析方法
  1 討議資料(2009)の内容
  2 分析対象としたコメント・レターおよび質問
  3 分析方法
 第3節 回答内容の分析結果
 第4節 分析結果の要約
 第5節 その他の検出事項

第6章 公開草案に対する会計基準設定組織の見解と根拠
 第1節 本章の概要
 第2節 分析対象および分析方法
  1 公開草案(2010)の内容
  2 分析対象としたコメント・レターおよび質問
  3 分析方法
 第3節 回答内容の分析結果
  1 質問1,質問2および質問3への回答内容の分析結果
  2 質問6への回答内容の分析結果
 第4節 分析結果の要約
 第5節 その他の検出事項

第7章 IASC/IASBの見解と根拠
 第1節 本章の概要
 第2節 分析方法
 第3節 「(論点1−1)金融負債の公正価値測定の是非」に関する
      根拠の分析
  1 分析対象
  2 分析結果
 第4節 「(論点1−2)自己の信用リスク部分の変動の取扱い」に
      関する根拠の分析
  1 分析対象
  2 分析結果
 第5節 分析結果の要約
 第6節 その他の検出事項
  1 フレームワークと前提
  2 会計公準と前提

第8章 仮説の検証結果と検出事項
 第1節 本章の概要
 第2節 分析結果の要約と仮説検証の結果
  1 各章の分析結果の要約
  2 仮説検証の結果
 第3節 IFRSの帰納法的アプローチ要素
  1 前提としてのフレームワーク
  2 論理体系としての会計基準
  3 帰納法的アプローチ要素
 第4節 原則主義とIFRS
  1 原則主義としてのIFRS
  2 アメリカにおける議論
  3 原則主義の不明確な定義
  4 フレームワークの改訂と原則主義
 第5節 IFRSの設定および改訂の過程の問題点
 第6節 IASBの新しい方向性
  1 証拠の重視
  2 学術研究への着目
 第7節 今後の課題

巻末資料1 
 2009年6月公表「討議資料:負債測定における信用リスク」コメント・
 レター回答者および回答内容一覧

巻末資料2 
 2010年5月公表「公開草案:金融負債のための公正価値オプション」
  コメント・レター回答者および回答内容一覧

 索 引



著者プロフィール 安井 一浩(やすい かずひろ)
1988年 公認会計士第2次試験合格
1989年 神戸大学経営学部卒業
1992年 公認会計士第3次試験合格 公認会計士登録
2006年 神戸大学大学院経営学研究科助教授
2008年 神戸学院大学経営学部准教授(現在に至る)

(著書)
『国際会計基準と日本の会計実務 三訂補訂版』(共編著)同文舘出版,2011年
(主要論文)
「金融負債規定に基づくIFRS体系の考察」『国際会計研究学会年報』2013年度第1号,2014年(国際会計研究学会平成26年度学会賞受賞)




















著者紹介

安井 一浩(やすい かずひろ)

担当編集者コメント
本書の趣旨は、下記「はじめに」の一部を引用ごらんください。

「本書では会計基準の一つである国際財務報告基準(IFRS)の規定に関する議論を行っている。ただその対象はIFRSの規定そのものではない。金融負債に関する規定に関する議論をもとに検討を行っているが、IFRSの規定の是非について論じていない。あるいは望ましいと思われる規定を提案しているものではない。すなわち、検討対象はその設定あるいは改訂の過程の議論において示された規定の根拠である。
なおここで根拠として考えられるものは、論理と実証である。あるいは論理と隣接する数学である。本書では根拠が論理あるいは数学であるのか、または検証可能性を備えた実証であるのかという観点から論じている。根拠が論理的ではない場合、あるいは実証的ではあるが検証可能性を備えていないものである場合には不完全な根拠であると判断した。検討の結果、根拠は一部を除いて不完全なものであった。不完全な根拠に基づいてIFRSという会計基準の設定過程における議論がなされていたという問題点の指摘が、本書における主な目的である。」

この問題点の指摘のため、膨大な資料と格闘して仕上げた研究書です。
さまざまな研究の視点があり、中でもこのようなアプローチは珍しいものと思われます。
ぜひご覧ください!